理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1453
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骨・関節系理学療法
側弯症に対する外観評価の関連性
自覚と他覚は一致するの?
荒本 久美子中井 英人澄川 智子小出 祐川上 紀明宮坂 和良小原 徹哉辻 太一
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抄録

【はじめに】我々は第41、42回日本理学療法学術大会において、側弯症におけるWalter Reed Visual Assessment Scale(以下WRVAS)を用いて術前および術後6ヶ月における親子間での認識の違いについて報告した.そこで今回、WRVASと実測値の関連性を確認するため、実測値が測定可能な項目において自覚と他覚との関連について検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象】2004年1月から2007年6月に当院で側弯症と診断され矯正固定術を施行し、術前の問診が可能であった知的障害のない中高生患者(13-18歳)120名(男性16名、女性104名)とした.平均年齢15±1歳、平均身長155.0±8.4cm、平均体重44.6±8.7kg、平均Cobb角60.1±19.2(29-152)°であった.疾患内訳は特発性側弯症87名、症候性側弯症24名、先天性側弯症9名であった.
【方法】評価項目としてCobb角は全脊柱X-Pより測定し、humpおよび肩の傾斜角度(以下肩の高さ)は電子クリノメーターを使用し測定を行った.測定方法は、humpでは前屈した際に肋骨隆起が最も大きい部位に、肩の高さでは両肩峰を結んだ線に電子クリノメーターを当てた.測定時、数値に動揺がみられる場合は最大最小の中間値とした.また問診形式にてWRVASを行い、 WRVASにおける体幹変形、hump、肩の高さの項目において正常を1として5段階にて評価を行い、それぞれの段階での角度分布を求め、段階間で比較した.統計学的処理は一元配置分散分析Kruskal-Wallisを行った後Turkey-Kramerの検定を行い、危険率5%未満を有意差ありとした.
【結果】各段階Cobb角平均値は段階1(0名)、段階2(32名):52.3°、段階3(61名):57.1°、段階4(23名):74.1°、段階5(4名):88.0°で、段階効果を認め(p<.0001)、さらに段階3と4の間に有意差を認めた. hump平均値は段階1(7名):15.0°、段階2(29名):14.4°、段階3(18名):15.4°、段階4(6名):20.2°、段階5(0名)で、段階効果は認められなかった(p<.1087).肩の高さ平均値は段階1(8名):2.8°、段階2(26名):3.1°、段階3(4名):1.5°、段階4(2名):3.5°、段階5(0名)で段階効果は認められなかった(p<.2466).
【考察】“側弯症=Cobb角”という認識が患者においても高いため今回の結果となった.その要因として、Cobb角に関しては医師からの診察時に、全脊柱X-Pを示し角度を提示していることによる視覚的フィードバック効果があるが、humpは背部の状況を自分で把握することが困難であり、肩の高さに関しては鏡を見ているとしても動作をしながら見ているためフィードバック効果が小さいのではないかと考えられる.以上よりWRVASは他覚所見とは異なり自己イメージがかなり反映されてしまう評価表であり、実測値を踏まえた上での患者客観的評価として実施することが重要であると考えられる.

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© 2008 日本理学療法士協会
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