理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 357
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内部障害系理学療法
慢性閉塞性肺疾患患者の摂食・嚥下機能
太田 清人南谷 さつき小久保 晃田上 裕記大石 尚史井上 登太河村 徹郎金田 嘉清
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抄録
【目的】
今回,慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)急性増悪の要因の1つに嚥下障害が起因すると考え,COPD急性増悪患者の摂食・嚥下(以下嚥下)機能を評価し若干の知見を得たので報告する。
【対象】
COPD患者において急性増悪を発症した症例20名(男性17名・女性3名:平均年齢73.3±3.2歳)と急性増悪を発症していない症例20名(男性15名・女性5名:平均年齢72.4±6.7歳)に分類した。内訳は慢性肺気腫28名,慢性気管支炎12名であった。全ての症例において嚥下機能に影響する脳・神経疾患が無く,食事は普通食摂取,コミュニケーションも特に問題はなく,在宅酸素療法を行っていた。
【方法】
福地らの「嚥下性肺疾患の診断と治療(嚥下性肺疾患研究会)」を参考に呼吸器内科医同席のもと以下のパフォーマンステストを行った。尚,Videofluorographyは造影剤を誤嚥した場合,COPD患者は喀出能力が困難である症例が多く,リスクが高いため今回は除外した。
<嚥下反射の惹起性の評価>1)唾液反復嚥下テスト(以下RSST):随意的な反射惹起性を定量的に測定する方法で患者に空嚥下を命じ,30秒間に何回嚥下運動が起きるかをみるテスト。2)簡易嚥下誘発試験(S-SPT):鼻腔から挿入した極細チューブより咽頭内に水を注入し嚥下を誘発されるまでの時間を測定するテスト。
<嚥下運動の協調性の評価>1)水飲みテスト(以下WST):水を飲ませて嚥下状態を観察するテスト。2)頚部聴診法(以下CA):嚥下する際に咽頭部で生じる嚥下音ならびに嚥下前後呼吸音を頚部より聴診するテスト。
以上の4項目について急性増悪群:急性増悪を発症した症例群とCOPD群:急性増悪を発症していない症例群の2群間でχ2</sup>検定(有意水準5%未満)を用い比較検討した。尚,各対象者に目的や意義,有害事象等を十分説明し,文書による承諾を受けインフォームドコンセントを行った。
【結果】
RSSTでは急性増悪群・COPD群間において有意に急性増悪群の嚥下回数が少なかった(p<0.05)。S-SPTでは急性増悪群・COPD群群間において有意に急性増悪群の嚥下反射が惹起するまでの時間時間が延長していた(p<0.01)。WST,CAでは急性増悪群・COPD群群において有意な差は無かった。
【考察】
藤谷は報告の中で慢性呼吸不全症例は局所の嚥下機能が良くても,肺炎を起こしている症例が存在する一方で,数日前までに普通食を全量摂取していたのか疑わしくなるほどの診察所見を呈する症例も少なくないと述べている。またCOPD患者の約3割に嚥下機能障害が見られるとの報告や二酸化炭素が蓄積すると嚥下反射が減弱するという報告もある。今回の結果から急性増悪群では嚥下反射の惹起性が低いことが分かった。今後摂食・嚥下障害はCOPDの急性増悪の原因の1つとして検討していかなければならないと考える。
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© 2008 日本理学療法士協会
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