理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1242
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内部障害系理学療法
動的肺過膨張は安静時のflow volume loopより予測可能か
間瀬 教史野添 匡史山本 健太村上 茂史岡田 誠荻野 智之松下 和弘加治佐 望和田 智弘居村 茂幸
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抄録

【目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に見られる動的肺過膨張は、呼吸筋仕事量を増加させ、呼吸困難を増強させると言われている。しかし、この現象を評価する一般的な方法がないため、臨床場面でその状態を把握することは困難で、患者に生じている可能性が高い現象として捉えられているにすぎない。今回は運動場面で見られるこの現象を安静時の肺機能検査からある程度正確に予測することはできないかと考え、実際に測定したCOPDの運動時肺気量位と安静時に測定したflow volume loop(FVL)から算出した運動時に予測される肺気量位を比較検討したので報告する。
【方法】対象はCOPD患者13例(年齢79.0±7.9歳、男性11名、女性2名、%肺活量73.7±22.8%、1秒率32.1±13.4%)であった。運動時の肺気量位は、自転車エルゴメータを用いたランプ負荷法中もしくは半径3mの円周を自由速度で歩行中に行った。どちらの負荷方法も自覚的最大運動強度まで行った。肺気量、流量の変化を呼気ガス分析器(ミナト医科学社製)を用いて測定し、パーソナルコンピュータで最大呼気・吸気時のFVL(MFVL)と運動時FVL(extFVL)を描き、終末吸気肺気量位(EILV )、終末呼気肺気量位(EELV)を求めた。
安静時のMFVLから運動時に予測される肺気量位を算出する方法は、動的肺過膨張が低い肺気量位での強い呼気流量制限を避け、比較的流量制限の弱い高肺気量位で呼吸し、より高い換気量を得ようとするために生じる、という仮説のもと、MFVLの中でどの程度の肺気量位で、かつどのぐらいの1回換気量で呼吸すれば最大の分時換気量を得られるか、を以下の方法で求めた。まずMFVLに対し整次多項式による回帰分析を行い最もあてはまりがよい式を求めた。その式から各肺気量位の吸気・呼気最大流量を求め、各肺気量位で1mℓの吸気・呼気を行うための必要時間を算出した。次に、1回換気量が100 mℓ、200 mℓ、300 mℓ、500 mℓ、750 mℓ、1000 mℓ、1250 mℓ、1500 mℓ、2000 mℓ、2500 mℓの呼吸を各肺気量位で行った場合の1呼吸に要する最短時間を求め、最大の呼吸数及び分時換気量を算出し、最も高い分時換気量が得られるEILV、EELVを求めた。
【結果および考察】運動時に測定したCOPD患者の肺気量位と安静時に測定したMFVLより求めた最大の分時換気量が得られると予測される肺気量位の関係を見るとEILV(r=0.99、P<0.01)、EELV(r=0.96、P<0.01) ともに高い正の相関が見られ、安静時のMFVLから運動時の動的肺過膨張の状況をある程度正確に予測可能であることがわかった。また、このことは、動的肺過膨張を起こす要因として低い肺気量位における流量制限が強く影響していることを示していると考えられた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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