理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1250
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内部障害系理学療法
当院における回復期心大血管疾患リハビリテーションの現状と問題点
河﨑 靖範榎並 両一村上 賢治松山 公三郎
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抄録
【背景】当院は回復期のリハビリテーション(以下リハ)を中心としたリハ専門病院であり、平成9年4月より心大血管疾患リハビリテーション(以下心リハ)に取り組んできた。平成18年9月に心リハ(1)の施設基準を取得し、医師1名、看護師1名、理学療法士1名のスタッフ3名で1日当たり4~7人を入院患者主体に実施している。
【目的】今回、当院の心リハの現状を分析し、回復期心リハにおける問題点について検討した。
【対象と方法】平成14年7月1日~平成19年6月30日の5年間に心リハを施行した108名を対象として平均年齢、基礎疾患、合併症、エルゴメータ/トレッドミル(以下E/T)使用率、心リハ実施期間、Barthel Index(以下BI)の変化、紹介元、退院先について調査した。心リハプログラムは、心リハ阻害因子非合併例にはストレッチ体操によるウォーミングアップ、主運動としてE/Tや歩行、チューブや重錘バンドを使用したレジスタンストレーニング、ストレッチ体操をクールダウンとして行った。E/Tによる主運動が不可能な脳血管疾患、運動器疾患などの既往がある心リハ阻害因子合併例に対しては、介助歩行や平行棒内歩行を行った。自律神経機能回復が乏しく起立性低血圧が持続する場合はティルト機能付車椅子を使用し、血圧の変動を抑えるようにしてリハを行い、車椅子座位も困難な場合は病棟ベッドサイドリハから開始した。
【結果】平均年齢は77±13歳(男性60名、女性48名)であった。基礎疾患は心不全51%、心大血管疾患術後30%、急性心筋梗塞/狭心症17%、大血管疾患保存治療例2%であった。合併症は脳卒中後遺症18%、脊髄梗塞による対麻痺4%、大腿骨頚部骨折4%、その他3%にみられた。主運動にE/Tを使用できたケースは全体の45%であった。心リハ実施期間は58±42日であった。BIの変化は心リハ前59±30点、心リハ後77±26点と有意に向上した(P<0.01)。紹介元は急性期病院からの紹介が86%であり、当院外来からの入院は14%であった。退院先は自宅復帰が63%であり、症状増悪や再検査目的による急性期病院への転院は10%であった。
【考察】心リハ対象患者の平均年齢は77歳と高齢で、基礎疾患の51%は心不全例であり、脳血管疾患や運動器疾患の心リハ阻害因子合併例が全体の29%にみられた。そのためE/Tを使用した集団リハは半数以上が困難であり、病棟ベッドサイドリハをはじめ介助歩行や平行棒内歩行などの個別での心リハを必要とした。心リハ実施期間は平均58日と長期であったが、BIは有意に改善し自宅復帰率も63%と良好であった。十分なリスク管理の下にADLの拡大と運動能力の向上を達成し、社会復帰を目指す事が回復期心リハにおける理学療法士の役割と思われる。今後益々増加が予想される高齢心不全例や心リハ阻害因子合併例にも十分対応ができるようにマンパワーと機器の充実を図ることが課題と考えられる。
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© 2008 日本理学療法士協会
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