抄録
【はじめに】当法人は,医療機関に従事する医師をはじめとし,理学療法士,作業療法士,看護師や保健師,健康運動指導士,アスレチックトレーナー,レクリエーションワーカー,音楽療法士,栄養士,保育士,教師や学生,地域の住民リーダーなどで構成されている.その中で理学療法士(以下PT)がNPO活動を介し,地域住民及び行政・企業に対し,保健・医療・福祉,教育及びスポーツなどの事業運営の協力及びコーディネート育成を行い,健康の維持・増進活動を行ってきた.その活動の中で,各地域で生活する人や,その生活の素晴らしさに触れる機会があり,活動内容を報告するとともに,PTの地域との関わり方について検討したので報告する.
【活動内容】平成3年より活動を開始し,長野県佐久広域を中心に,県内全域及び近隣都県にまで活動の範囲を広げる事ができた.保健分野では,小中学校での身体機能評価やスポーツと怪我からの予防講演.市町村の保健補導員育成,訪問リハビリなどを行い,福祉分野では介護や転倒予防教室,認知症予防教室,介護福祉研修会などを行ってきた.その他には障害児と高齢者の交流の場としての音楽会の開催,住民リーダー育成の為の研修会の開催などである.また,関係行政機関及び住民に対しNPO団体の存在,PTの活動に対しての需要についてアンケート調査を行った結果,その必要性が示唆される内容であった.
【問題点】地域活動を行う上で挙げられる問題点は,まず,同じ市町村で類似した依頼があることや,地域格差により指導形態が統一化できない状況にあること.回数の確保が予算的に得がたい理由として,補助金・助成金の終了後に活動の継続性がないことが挙げられる.更に広域で評価が統一化なされていないこと,全人的な事業展開が成しえないこと,町村合併以後の政策が整備されていないことが挙げられる.アンケートの結果からは,依頼できるNPO団体やPTの存在が少ないことが挙げられた.
【考察】活動を通じて住民との触れ合いを振り返り,更にアンケートの内容を踏まえると,アンケートの結果にも示唆されるように,地域にはNPO団体の存在が必要であるといえる.それに伴い医療従事するPTも地域で活動する時間や参加する機会を設けて頂くことが望ましい.また,その活動は継続的で一貫した内容であり,評価内容が統一化されることにより地域への貢献度も上昇するのではないか考える.更に住民に必要な健康教室等を住民自身が自立して運営できるように地域と関わることが必要ではないかと考える.
【まとめ・今後の課題】地域の住民の健康維持・増進活動にはNPO団体やPTの存在が必要である.しかし,必要とされる内容は多岐にわたるため柔軟に対応するための能力やマンパワーの確保が必要であり、連携する団体や住民への運営教育も必要であることが示唆された.