理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1162
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生活環境支援系理学療法
受傷より長期に経過した頸髄損傷者の車いす適合
杉山 真理清宮 清美塚越 和巳常見 恭子河合 俊宏
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キーワード: 車椅子適合, 褥瘡, 頸髄損傷
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抄録
【はじめに】当センターでは平成14年度から褥瘡対策委員会が設置され、褥瘡治療を目的とする褥瘡入院を行っている。理学療法士も対策委員の一員として褥瘡治療および再発防止に努めている。褥瘡入院患者の中には受傷から10年以上経過した者も多く、加齢や身体機能の変化により車いすやクッションの不適合を有する者も少なくない。今回、仙骨部の褥瘡治療目的で入院した頸髄損傷者を通して車いす適合の必要性および方法について考察する。

【症例】65才男性。第7頸髄損傷、完全四肢麻痺。症例に本学会で報告する目的および内容を説明し、同意を得た。

【経過】1994年4月階段からの転落にて受傷。骨傷なし。急性期病院にて保存的治療を行い、その後、リハビリテーション目的にて当センターに転院となる。1995年4月自宅退院。1996年12月身体障害者重度更生施設入所。1997年2月退所し、在宅生活を送る。その後、近医にてフォローを受けていたが、2007年3月難治性の褥瘡のため入院となる。

【治療】入院時は仙骨部に30×30mmの褥瘡があり、薬剤による治療と並行して車いす乗車制限と車いす座位評価を行った。

【理学療法評価】両側股関節に異所性骨化と変形性股関節症の所見があり、著しい可動域制限が生じていた(屈曲40度)。そのため、車いす上では骨盤を後傾させ座位を保っていたが、著明な前方への滑り出しが生じ、支持基底面の狭小化や足部の落下が観察された。駆動は数メートルで姿勢が崩れ、自己修正困難であるためほぼ全介助であった。

【考察】本症例の自宅退院時(1995年)の股関節屈曲角度は約100度であり、身体機能にあわせた車いすが処方されていたと思われる。その後、徐々に異所性骨化や変形が進み可動域制限が生じたと考えられるが、その間、数回作成した車いす寸法には変化が無く、1台目とほぼ同じものを作成していた。身体機能にあっていない車いすを使用し続けることで褥瘡が発生し、日常生活活動も徐々に低下した可能性が高いと考えられる。受傷より長期に経過した症例では、PTやOTのリハビリテーションサービスを利用する機会がほとんどなく、加齢による体格の変化や体力低下、可動域制限などの機能的変化にあわせて車いすを処方することが困難となっている。身体状況にあった車いすを使用し褥瘡などの二次的な合併症を防ぐためには、作製前からのシーティング技術の向上だけでなく、利用者へ車いす適合に関する注意点を伝えること、訪問看護師やヘルパーなどの他職種との連携を築くこと、更生相談所の活用が必要であると考える。今後、利用者自らが身体機能の変化に気づき車いす寸法と関連づけて考えられるよう、車いす作成に関するリーフレット等を作成し、指導および教育を進めていきたい。
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© 2008 日本理学療法士協会
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