抄録
【目的】2000年から、介護保険制度が開始された。認定審査委員(以下委員)の構成は、「医療・福祉・保健の各分野に関する学識経験者を有する者を均衡に配置するもの」とされており、職種による指定はない。今回は、認定審査会(以下審査会)の理学療法士(以下PT)の在籍割合と、PTの役割がどのように認識されているかを、各自治体にアンケート調査を実施し、得られた結果を集計し分析したので報告する。
【対象と方法】電話連絡により、調査に賛同していただいた、東京都内市区町村(58自治体)の審査会の担当職員を対象に、各自治体を特定しない条件でアンケートを実施した。アンケートの主な内容は、審査会の規模、委員の職種別内訳、PTに対するイメージとした。回答は無記名で、多選択方式・自由記載とし、郵送にて回収した。
【結果】アンケートの回収率は、84.4%(49自治体)であった。現在、委員にPTが在籍する割合は、全回答の59.2%であり、審査会が始まった当初からPTが在籍する割合は、45.8%であった。PTに対するイメージの選択回答で、PTが在籍している自治体としていない自治体との間で差が見られたのは、「介助方法を助言・指導する」・「住宅改修の助言をおこなう」・「福祉用具の助言・指導をする」の3点で、PTが在籍しない自治体が低い回答率であった。また、PTの在籍・非在籍に関係なく、「運動を指導・助言する」に対して100%、「歩く練習をする」に対して70%と、この2点に関しては高い回答が得られた。PTが審査会に在籍しない理由は、「特別な理由はない」・「必要性・専門性がわからない」等があった。
【考察】今回は、「医療・福祉・保健」の各分野の集合体を統括する部署に対して、アンケートを実施した。結果から、PTに対するイメージは「運動を指導・助言する」・「歩く練習をする」という回答が非常に多いことがわかった。PTは医療・福祉・保健等のさまざまな領域において活動しているが、日本理学療法士協会の2000年の調査によれば、医療(病院・診療所)に所属する割合が78.3%であり、介護保険が始まった同年に、医療機関で働いている割合が非常に高いという背景からも、機能訓練という一側面のイメージが強くなっていたと考える。しかし、介護保険関連施設である医療福祉中間施設での所属の割合は、2000年は5.3%であり、2005年には8.3%と増加し、以前よりも地域社会全体でのPTの活動も増えている。今回のアンケートにより、各自治体によってPTに対する認識度の違いがあることがわかった。PTが在籍しない自治体では機能訓練のイメージが強く、PTが在籍する自治体では、介助方法指導・住宅改修や福祉用具の助言等の地域社会での支援活動等も行うと認識されていた。現状でも医療機関に所属することの多いPTだが、保険制度の変遷とともに、医療機関以外の方面にもPTが果たす役割を広く伝えていくことが必要と考える。