抄録
【はじめに】
診療報酬の改定により、維持期にある患者の一般病床への入院は困難になりつつある。しかし地域におけるリハ資源が不十分な状況では、一般病床においても短期集中的なリハ提供とその後の介護保険サービスとの連携により在宅支援を行う必要性は高いと考える。
今回、12年前に脳血管障害を発症し車椅子レベルで妻と共に在宅生活を送る中で、次第に活動の質・量共に低下し、妻の介助負担が増強した理由で当院の一般病床に入院した症例を担当した。6週間という限られた入院期間で歩行補助具を駆使し能力の再獲得と地域連携をもって在宅生活へ繋ぐ事ができた。このことを振り返り、維持期にある患者の一般病床入院における在宅支援について考察する。
【症例紹介・経過】
症例T・K、70歳代男性、診断名は廃用症候群(BIが70点から55点に低下)である。車椅子レベルで妻の介助と共に在宅生活を送っていた。今回の入院直前まで通院リハ週1回、通所リハ週2回利用していたが立位動作・歩行を行う機会が少なく次第に非麻痺側優位の自己流の動作要領となり麻痺側下肢の廃用をきたす。そして次第に移乗・摑まり立ち不安定となり、妻の介助負担増強、在宅生活継続困難となり当院入院となった。チーム目標は、妻との在宅生活の再獲得とした。PTは非麻痺側優位の動作修正を行い、麻痺側下肢の十分な支持性の獲得により両下肢支持での移乗・摑まり立ちの安定性向上と、妻のセルフケアの介助量軽減を図ることを目指した。
本症例は麻痺側膝・足部のROM制限に加え痙性強く立位動作時の麻痺側下肢接地困難であった為、長下肢装具を活用した抗重力肢位の確保が重要と考えた。しかし入院期間だけでは訓練効果を十分に出せないと判断し、退院後も長下肢装具を活用してもらえるように当初からケアマネジャーと通所リハ担当者に連絡を取り合い目標の共有化を図った。また家族指導や試験外泊も適宜導入した。6週間後、ROM改善、痙性軽減した。結果、セルフケアの介助量軽減し、妻との在宅生活を再獲得できた(BIが70点に向上)。入院中に開催されたサービス担当者会議にも出席し、退院後の課題について意見を述べケアプランに反映させた。
【考察】
本症例は装具を活用した集中的なリハを行い効率的にADL能力向上が図れたこと、更には入院中の成果を在宅生活に定着させるよう当初からPTも主体的にケアマネジャー等と連携したことで再び在宅復帰を獲得したと考える。一般病床入院患者の在宅支援においては、集中的なリハを通して患者自身の心身機能や活動の質的・量的な面を変化させ在宅生活の質を向上させること、医療機関と地域との連携を充実させ入院中の成果を維持・向上させること、患者だけではなく家族も支えていく視点が必要不可欠と考える。