理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1677
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生活環境支援系理学療法
頚髄損傷者の自動車関連ADLについての実態調査
片岡 正教奥田 邦晴藤本 愛美
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キーワード: 頸髄損傷, 自動車, ADL
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抄録

【目的】車いすが日常生活での移動手段となる脊髄損傷者にとって自動車運転が自立することは、社会生活における活動範囲の拡大につながる。特に上肢機能の障害を伴う頚髄損傷者にとっては車いすと座席間の移乗、車いすの積み下ろし、運転操作等が困難であることが予想される。本研究の目的は、頚髄損傷者にとっての自動車の役割、移乗方法と他の移乗動作との関連性について実態を明らかにし、理学療法場面における自動車関連ADLの積極的な導入の必要性について考察することである。
【対象および方法】C6損傷者(以下C6)14名およびC7以下の損傷者(以下C7)6名の車いすツインバスケットボール選手に対し、自動車運転に関しての聞き取り調査を行い、そのうち14名(C6:10名、C7:4名)に対して、上方と後側方からデジタルビデオカメラで乗車の撮影を行った。そして、所要時間、移乗方法、プッシュアップストラテジ(以下PS)について分析し、損傷レベル別に比較検討した。所要時間は準備相、移乗相、片付け相、積み込み相の4相に、移乗相におけるPSは殿部の挙上方法から垂直型・回転型・混合型に分類した。
【結果】聞き取り調査から、受傷後自動車に乗る動機として、「行動範囲が広がる」「自由に出かけられる」といった回答がそれぞれ24%を占めた。乗車に関しては「車いすの積み込み」「移乗」を最も困難と感じる者がそれぞれ33%、29%であった。自動車の選択には座席の高さや車いすの収納スペースの広さを考慮しているという意見が上位を占めた。また、他の移乗との比較で、自動車よりもトイレの移乗が困難と答えた者が70%以上あり、対象者の中にはベッドへの移乗は自立していないが自動車への移乗が自立している者もいた。画像解析から、乗車の平均所要時間はC6で267.7秒、C7で71.7秒であり、C6では準備相、C7では積み込み相の占める割合が最も大きかった(33%、45%)。
【考察とまとめ】結果から、特に高位頚髄損傷者は自動車運転自立において移乗動作を重要視し、より安全かつ円滑に移乗するために環境設定に時間を費やしていることや、頭部や膝をドアに当てた3点支持など下肢の位置の工夫や支持点を増やすことで安定性を保持していることがわかった。また、トイレへの移乗能力が自動車運転自立の一指標となることが示唆された。一方、ベッドへの移乗の方が困難であるとする回答があったことも興味深い結果である。今回の調査はスポーツ選手を対象にしたものであったため、対象者のアクティビティは非常に高いと考えられるが、頚髄損傷者の理学療法において、身体特性を考慮したより早期からの積極的な自動車関連ADLの指導の重要性が示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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