理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 188
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物理療法
疲労筋に対する冷却の影響について
宇都宮 雅博新田 健太澤口 悠紀半田 健壽遠藤 敏裕諸角 一記吉崎 邦夫烏野 大芳川 晃久藤原 孝之阿部 康次山本 巌
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キーワード: 物理療法, 寒冷療法, 筋疲労
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抄録
【目的】
寒冷療法は,近年日本でも多く利用されている手段のひとつである.冷却することで組織温の低下を引き起こし,組織の血流に変化を与える.その効果として局所の新陳代謝の低下,毛細管透過性の減少,一次的血管収縮と二次的血管拡張,浅部疼痛受容器に対する麻痺作用,筋紡錘活動の低下などとされている。しかし、疲労筋に対する効果はいまだ不明確であり論議の続くところである。本研究の目的は疲労筋に対する冷却の影響を明らかにすることである。等尺性収縮での運動課題にて筋疲労引き起こさせ、再度運動を行った場合の運動持続時間を比較し冷却による影響を検討した。また、その時の生体反応を組織循環量、深部温度、表面筋電図をもちい計測した。
【方法】
本研究は学校法人こおりやま東都学園研究倫理委員会の承認を受けている。対象者は書面にて本研究の趣旨を説明し同意を得ることが出来たもので、上肢に障害既往のない健常成人8名とした。対象者の性別は男性8名であった。運動課題は仰臥位で肘関節最大屈曲筋力の40%の負荷を肩関節外転位、肘関節90度屈曲位を保持する等尺性運動とした。運動終了は肘関節の屈曲角度が70度以下となった時点とした。1度目の運動終了後10分間の処置時間を設け処置後再度同様の運動を行った。運動間の処置として安静10分間(以下、安静群)、2分間の冷却と8分間の安静(以下、2分冷却群)、10分間の冷却(以下、10分冷却群)の3つの処置とした。各実験はランダムとし被験者の筋疲労が影響しないよう十分な日数を空け行った。冷却には、噴射型冷却刺激装置(伊藤超短波社製Cryo 5)を用い、上腕中央前面を中心とし移動法にて熟練したセラピストが施行した。計測装置は、近赤外線分光器、深部温度計、表面筋電図を対象となる上腕二頭筋筋腹に設置した。
【結果】
処置後運動時間は処置前運動時間と比較すると、安静群59.2%、2分冷却群73.1%、10分冷却群80.7%であり全ての群において運動継続時間の低下が認められた。各群においては安静群と10分冷却群に有意差が認められた。深部温度は、安静群と2分冷却群では運動終了後より上昇傾向が認められた。10分冷却群では処置中より低下傾向が認められ、他の群と比較しても2度目の運動終了時より低下が認められた。組織循環量は3群とも運動終了後より増加し徐々に減少する傾向が認められた。10分冷却群においては処置中より減少傾向となり処置後の運動終了後の増加も抑えられた。
【考察】
本研究に限局すれば,今回の運動課題は疲労を引き起こすに足りる運動であった。疲労筋に対する10分間の冷却は運動継続時間を延長させることが認められた。深部温度の変化より、代謝が低下し運動継続時間の延長につながったと考えられる。冷却による即時効果として疲労筋に対する回復効果が示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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