理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1016
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物理療法
頚肩腕症候群の一症状「肩こり」に対する超音波療法の即時効果について
川島 康洋林 祐次遠藤 昭隈元 庸夫伊藤 俊一
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キーワード: 肩こり, 超音波療法, 疼痛
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抄録

【目的】
いわゆる頚肩腕症候群の一症状である「肩こり」は厚労省による国民生活基礎調査の有訴者率1,2位を腰痛と共に占める。近年,肩こりに関しては僧帽筋の筋硬度の上昇や深部組織循環動態の障害を指摘する報告が散見され,治療のための理学療法としては牽引や温熱療法が挙げられている。しかし,これらの物理療法の効果に関する報告は少ない。
本報告の目的は,肩こりを有する者に対して,温熱療法として超音波療法を行った際の即時効果を無作為化比較対照試験により検討することである。
【対象と方法】
対象は,本研究の目的,方法などの説明を十分に行い同意を得た肩こりを有する15名とした。
事前に頸部機能指数(NDI)評価し,無作為に超音波施行群8名(US群),プラセボ群7名(P群)の2群に振り分けた。各々,十分な馴化時間をおいた後,超音波施行部位は僧帽筋として,US群では周波数3MHz,出力1.5W/cm2の連続照射にて5分間の連続照射を行った。P群では,超音波を無出力とした以外はUS群と全く同様の実施条件として行った。使用機器は,伊藤超短波社製超音波治療器US750を用い,振動子はLタイプを使用して,ERA6cm2,BNR2.4とした。肩こりの程度は,施行前後にVASにて評価した。また,同筋の表面皮膚温をリーゼ製皮膚温計TH03FHを用いて,施行前,施行直後,施行終了10分経過時に測定した。統計学的処理は,Wilcoxonのt-testと多重比較検定を用い,有意水準を5%未満として検討した。
【結果】
NDIは,両群の間に有意な差を認めなかった。
肩こりの程度に関しては,US群の施行前後で有意な改善を認めた。
皮膚温に関しては,US群で施行前と比較して施行直後に有意な皮膚温上昇 を認めた。

【考察】
今回の結果は,超音波療法の温熱効果による循環障害の改善,発痛物質の潅流促進,筋スパズムの改善など一般的に認められた作用から,肩こり緩和につながったと考えられる。しかし,P群においても肩こりの軽減がみられたケースもあり,超音波機器のヘッドによるマッサージ効果や心理的影響も肩こりの減少に影響を与えると考えられた。今後は,肩こりの誘因と生理的身体反応の再検討が必要と考えられるが,以上の研究結果から,肩こりに対する超音波療法は温熱効果による症状の軽減が期待できる可能性が示唆された。
【まとめ】
肩こりを有している者に対して,超音波療法施行し即時効果を検討した。超音波施行群では,肩こりの程度の軽減が認められた。超音波施行群では,施行直後で皮膚温の上昇が認められた。肩こりに対する超音波療法は温熱効果による症状の軽減が期待できることが示唆された。今後,肩こりの誘因と生理的身体反応の再検討や他のモダリティーを含めた比較検討も必要と考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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