理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 394
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教育・管理系理学療法
臨床技能指導が自己効力感に与える影響
客観的臨床能力試験後のフィードバックによる効果
金子 純一朗森本 優江齋藤 里果倉本アフジャ 亜美潮見 泰藏丸山 仁司
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抄録

【目的】客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination,OSCE)は診療等に関する実技や技能,態度を適正に評価するテストとして普及され,本学部理学療法学科においても平成15年より実施している.総合実習開始前に学生の基本的臨床技能の評価を行なうことによって.学生みずからが現在の臨床技能を客観的にとらえる.その結果,臨床技能を習得するための具体的な目標を設定することができることを本学部の到達目標としている.今回,試験直後のフィードバックを実施し,臨床実習に対する自己効力感において介入前後の比較を行ったのでここに報告する.

【方法】本学部理学療法学科3年生100名のうち, 37名にアンケート調査を依頼し,回答のあった30名を対象者とした.アンケート調査は一般性セルフエフィカシー(GSES)とした.統計処理はSPSS15.0J for windowsを用い,3年次の評価実習後とOSCE課題のフィードバック直後において改善群と非改善群に分類し,両群間においてMann-WhitneyのU検定を行った.なお,統計的有意水準は5%未満とした.

【結果】対象者のGSES得点は評価実習直後8.33±1.83,OSCE課題のフィードバック直後8.17±1.88であった.OSCE課題のフィードバック直後の結果から評価実習直後の得点よりも改善のあった群を改善群,不変もしくは低下した群を非改善群として分類した.内訳は改善群13名,非改善群17名であった.分類の結果より,OSCE課題のフィードバック直後のGSES得点において改善群9.38±1.51,非改善群7.73±1.83であり,有意差が認められた.

【考察】3年次の評価実習終了時から学生個々に実習結果を把握し,様々な学習機会を通じて学生自身が問題解決を行っていると考えられる.しかし,4年次の総合臨床実習後に問題点の指摘があり,何らかの補習を実施する場合もある.OSCEは学生みずからが現在の臨床技能を客観的にとらえ,臨床技能を習得するための具体的な目標を設定することを支援することであり,OSCE直後のフィードバックが個々の学生に対してより明確な目標が提示でき,自己効力感に反映するものと考えられる.本研究の目的は自己効力感への効果を明らかにすることとした.その結果,対象者の43%に有意な改善を示した.高校生を対象にした先行研究において,自己効力感の高い群は相手意見を好意的に受け取る傾向にあると報告している.よって,本研究結果からOSCE直後のフィードバックは自己効力感を高める手段であり,GSESは臨床実習に関する問題解決における行動水準を測定できることが示唆された.

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© 2008 日本理学療法士協会
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