理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 412
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教育・管理系理学療法
ケアクラークシップにおける知識量の継時的な変化について
高島 恵平林 弦大松本 周平松崎 智幸長瀬 エリカ加藤 研太郎
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抄録

【目的】ケアクラークシップ(以下:CC)を導入して、2年目となる。1学年夏季という早期に1週間、介護老人保健施設において介護の助手的体験や見聞をすることにより、対象者の生活障害を知ることや医療人としての関わり方の体得などを目的としている。先行研究として、CCにおける体験量と知識量の変化について調査を行ったところ、体験量および知識量ともにケアクラークシップを行う事で有意に増加した。しかし、実習は施設での見聞・体験のみではなく、実習前のセミナーや実習後のまとめも含まれることから、今回は実習前セミナーを比較対象に加え、学生の知識量における継時的な変化を追い、その要因を検討することとした。
【方法】対象は本校理学療法学科1学年のうち介護関係の職務経験のない学生37名とし、事前セミナー前、事前セミナー後、実習後で同項目のアンケートを行った。項目内容は1.介護に関する経験度合い(実習前後のみ)、2.「介護」という言葉から想起される単語の列挙(10分間)、の2項目とした。経験度合いについては6群28項目からなるADL関連項目をあげ、それぞれについて見たことも経験もまったくないものを1、見たことはあるものを2、経験または手伝ったことがあるものを3とし、経験度合いおよび語彙数の変化を求めた。なお、経験度合いの比較には対応のあるt検定を用い、語彙数の比較には統計ソフトSPSS12.0を使用しTukeyの多重比較法を行った。
【結果】経験度合いについて実習前は平均46.7±7.79であったのに対し、実習後は平均74.7±6.45であり、実習前に対して実習後の経験値が有意に高いという結果となった(p<0.01)。また、語彙数について事前セミナー前は26.6±10.49、事前セミナー後は37.6±9.53、実習後は44.8±10.94であり、事前セミナー前と比較して事前セミナー後の語彙数が有意に増加し(p<0.01)、さらに事前セミナー後と比較して実習後の語彙数も有意に増加した(p<0.01)。さらに、それぞれの時期における語彙の内容を追うと、事前セミナー後では「おむつ」「車椅子」など生活関連用具に関する語句が多く、実習後では「思いやり」「辛い」などの情意面に関する語句や「見守り」「声かけ」など対象者との関わり方に関する語句が多かった。
【考察】本調査の結果から、学生の知識量には事前セミナー及びCCの両方が影響を及ぼしていると言えるが、CCを行う事が知識をより具体化させ、さらに情意面にも影響を与えることが示唆された。講義の受講や視聴覚教材を使用した学習などよりも、体験することによる学習定着率の方が高いことが知られており、今回の結果からも、より具体的な経験(クラークシップ)が知識の量的な変化のみならず、質的な変化をも及ぼしていることが推察された。今後は、本実習で得られた知識の定着率について継時的な変化を追うことで、CCにおける長期的な効果についての検討が課題とされた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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