理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1266
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教育・管理系理学療法
当院リハビリテーション部におけるインシデント・アクシデントレポートの調査
齊藤 理恵松谷 実菊池 隼榎本 陽介塚田 陽一強瀬 敏正荻野 雅史
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抄録

【はじめに】近年、日本の医療現場において事故防止、安全管理への取り組みが積極的に行われ、それらの重要性に対する意識は高まっている。当院リハビリテーション部においても事故防止とともに現状を詳細に把握することを目的にインシデント・アクシデントレポート提出を平成18年7月より義務付けた。今回、その内容を調査し、今後の対策への一助とするため考察し報告する。
【方法】平成18年7月から平成19年10月までの間に提出された当院リハビリテーション部におけるインシデント・アクシデントレポートについて、危険度、職種、経験年数、場所、内容を調査した。危険度の判定は、報告者と責任者とが協議し、0~2の3段階で判定した。レベル0は「ヒヤリ・ハット」、レベル1は「事故は起きたが、患者の状態に変化はなく経過観察の状態」、レベル2は「事故が起き、何らかの処置・検査が必要となった、障害が残った等の状態」とした。
【結果】報告件数は26件であった。危険度はレベル0が20件(76.9%)、レベル1が3件(11.5%)、レベル2が3件(11.5%)であった。職種はPT23件(88.5%)、OT2件(7.7%)、ST1件(3.8%)であった。経験年数は1年目7件、2年目8件、3年目9件、6年目2件であった。場所はリハビリ室20件(76.9%)、病棟1件(3.8%)、エレベーター1件(3.8%)、その他4件(15.4%)であった。内容は練習中、送迎中の転倒・転落17件(65.4%)、連絡・報告の不徹底2件(7.7%)、接遇2件(7.7%)、患者と物との接触による外傷2件(7.7%)、チューブトラブル1件(3.8%)、病衣の破損1件(3.8%)、患者一人での起き上がり1件(3.8%)であった。
【考察】報告件数は他の報告と比較すると少ない傾向にあった。危険度ではレベル0が約8割と最も多く、他の報告と同様の傾向を示した。これらは一見良好な結果に思われるが、OT・STによる報告が極端に少ないことや、連絡・報告の不徹底、接遇が各々2件と少なかったことから、医療事故に対する意識、関心の低さとも考えられる。転倒・転落のような直接患者の身体へ害が及ぶ可能性のある事例やスタッフ自身が危険性を察知しやすい事例ではインシデント・アクシデントとしての認識が強く、報告義務の意識も高いと考える。しかし連絡・報告の不徹底、接遇などの軽微なインシデントは直接患者の身体状態に変化がないため報告義務の意識が低く、報告の漏れが生じている可能性があったのではないかと考える。このように現状ではインシデント・アクシデントに対するスタッフ全体の意識にばらつきがあると考えられる。今後はレポート提出基準の統一とともに継続して現状の把握を行い、その内容を部内でフィードバックすることによって、まずはスタッフ間でのインシデント・アクシデントに対する意識の向上が必要と考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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