理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-001
会議情報

理学療法基礎系
ラット脊髄損傷モデルにおける膝蓋下脂肪体の病理組織学的変化
内田 健作北出 一平細 正博松崎 太郎上條 明生荒木 督隆高橋 郁文
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】脂肪体は、その柔軟性が関節運動に関与されるとされており、膝関節においても豊富な膝蓋下脂肪体を有している.ギプス固定などにおける関節不動モデルなどにおいては、先行研究により関節構成体の変化としてこの脂肪体の脂肪細胞の萎縮・線維増生を挙げているが、脊髄損傷後における不動での膝蓋下脂肪体の変化に関して病理組織学的検討を行った報告は見られない.今回、ラット脊髄損傷後の膝蓋下脂肪体が関節の不動化によってどのように変化するのかを量的に明らかにすることを目的とした.

【方法】8週齢のWistar系雌性ラットを1週間馴化させた9週齢のラットを使用した.対象を、脊髄を完全切断する脊髄損傷群(n=9)と、対象群(n=9)に分けた.ラットの飼育中は行動に制限を加えず自由に移動、摂食、飲水を可能とした環境設定にした.また、脊髄損傷群に対しては、褥瘡などの確認と手圧排尿/排泄を毎日2回行った.尚、両側の後肢関節の可動域を変化させる行為および介入は加えない事とした.飼育期間は、損傷後1週(n=3)、2週(n=3)および4週(n=3)とした.飼育終了後、深麻酔下にて可及的に後肢を股関節にて離断して採取した.採取後は10%中性緩衝ホルマリン溶液にて組織固定後に脱灰を行い、膝関節を矢状断にて切り出して、中和・パラフィン包埋を行った.標本をミクロトーム(SM 2000R, Leica社)にて3μmにて薄切した後にHematoxylin-Eosin染色を行い、光学顕微鏡下で膝蓋下脂肪体を観察および撮影し、Image J 1.38を用いて画像から細胞の面積を算出した.また、後肢の運動機能をBasso Beattie Bresnahan Locomotor Rating (BBB) scaleにて経時的に評価した.なお、本実験は金沢大学動物実験委員会の承認を得て行われた.

【結果】損傷1週では対象群と比べ脂肪細胞の面積に変化を認めなかった.損傷2週では脂肪細胞の萎縮および線維化を認めた.損傷2週および4週群では、脂肪細胞の面積の分散では対象群と比較して大きく、脂肪細胞の面積は減少していた.また、BBB scaleの平均値は損傷翌日(0)、損傷1週(1.2)、2週(4.1)そして4週(7.2)と増加傾向を認めた.

【まとめ】ラット脊髄損傷モデルを作製し、膝蓋下脂肪体の病理組織学的変化を観察および面積変化の検討を行った.損傷2週にて脂肪細胞の萎縮と線維化を生じ、損傷2週および4週では脂肪細胞の面積が減少していた.これは拘縮で指摘されている変化と類似しており、脊損と拘縮の病態において、脂肪体に対する何らかの共通機序が存在する可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top