理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-007
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理学療法基礎系
トレッドミル運動が加齢マウスの関節軟骨に与える影響
榊間 春利松田 史代生友 聖子入江 愛嶋田 博文吉田 義弘米 和徳井尻 幸成
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抄録

【目的】変形性関節症(OA)は加齢とともに進行し、荷重部の軟骨基質が失われる一方、関節辺縁部では骨棘の増殖など多彩な変化を示す.我々は軟骨細胞の部位による表現型の違いに関与する分子としてストレス反応性分子GADD(Growth Arrest and DNA damage inducible)45 betaに着目した.GADD45betaは、軟骨細胞のType II collagenや変形性膝関節症(OA)の関節軟骨変性に関与する基質分解酵素であるMMP13などの遺伝子発現を調節する.また、OAの初期ではクラスターを形成する軟骨細胞に発現が亢進する.これらのことより、GADD45betaは軟骨変性の初期に関与すると考えられる.今回、GADD45betaの発現を指標にして、加齢関節軟骨への運動負荷が軟骨細胞に与える影響を免疫組織学的に検討したので報告する.

【方法】50週齢の老化促進マウス(Senescence-Accelerated Mouse: SAMP1)12匹、対照として同週齢のICRマウス10匹を用いた.それぞれ、8週間の普通飼育群(SAMP1:4匹、ICR:5匹;非運動群)、8週間のトレッドミル運動群(SAMP1:8匹、ICR:5匹;運動群)に分けた.トレッドミル運動は13m/min の速度で1日2回、20分間行った.実験終了後に一側後肢より膝関節を採取し、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(pH7.4)で一晩固定した.脱灰後パラフィン包埋して、切片を作成し、ヘマトキシリンエオジン染色、GADD45beta抗体を用いた免疫組織化学染色を行った.関節荷重部と辺縁部におけるGADD45beta陽性細胞数や動物の自発運動量を定量的に評価した.統計学的検定には一元配置分散分析を用い、有意水準を5%未満とした.なお、本研究は鹿児島大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った.

【結果】非運動群において、SAMP1の関節荷重部では比較的表層部に規則的にGADD45beta陽性細胞がみられた.辺縁部、特に骨棘形成部では強い発現が観察された.ICRマウスの発現はSAMP1と比較して有意に減少していた(p<0.05).非運動群と運動群の比較において、SAMP1のGADD45beta陽性細胞は運動群が有意に減少していた(p<0.05).ICRマウスは運動による陽性細胞数に違いは認められなかった.SAMP1の自発運動量は非運動群において減少していた.

【考察】今回の結果より、軟骨細胞の肥大化やApoptosisに関与するGADD45betaの発現が、運動負荷により減少したことは運動量減少に伴った老化による軟骨変性に対して、運動負荷が軟骨細胞の恒常性を維持するための刺激になる可能性が示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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