理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-166
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺患者に対しての装具処方の考え方
―脳梗塞を呈した症例の装具処方を通して―
北村 孝嗣渡邉 彰大木 謙一郎高桑 佳子荻野 雅史跡部 武浩
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抄録

【目的】現在、様々な下肢装具が開発される中、臨床上最もプラスチック式短下肢装具(以下PAFO)の処方が多く、3次元的アライメントを考慮することが重要であるとの報告がある.脳卒中片麻痺患者の治療手段の一つとして、当院では装具療法を積極的に行っている.治療を目的とした装具の作製は容易ではなく、採型や仮合わせに難渋することが多い.しかし、その経過に対する報告が少ないように感じる.今回、装具の再作製を行った症例を治療する機会があり、完成に至るまでの過程において検討し考察したので報告する.
【症例紹介】本研究に同意を得られた右片麻痺を呈した58歳の女性.平成20年1月25日発症.下肢Br-stageIIIだが、一見弛緩様の麻痺で下垂足である.裸足歩行での麻痺側踵接地~立脚中期では床面に対しての下腿軸が外側偏位し、骨盤右側方動揺、股・膝関節屈曲位となる.そのため、PAFOによるアライメントの補正修正を考えた.装具採型は発症より45日後に施行し、翌週の52日後に装具使用を開始した.採型は立位保持が困難なため座位にて行った.足関節背屈5°での床面に対しての踵骨・前足部のアライメントを確認し足部長軸と下腿軸を調整.立脚期での床面に対する下腿軸の外側偏位、下腿三頭筋腱部の半径が大きいことを考慮すると、装具の可撓性が高くなり外側方向に撓みやすくなることが予想された.ポリプロピレン3mm厚で外側部のトリミングを少なくするよう義肢装具士(以下PO)に依頼をした.
【結果】作製されたPAFOを実際装着し歩行を行うが、踵接地~立脚中期にて外果部が強く撓み床面に対しての下腿軸が外側偏位・下腿のねじれが生じてしまい、装具による体幹・股・膝関節に対するアライメントの修正が不十分であった.再度POと共にチェックアウトを行い、1.足部長軸の不一致、2.下腿軸の不一致、3.外果部のプラスチックの厚みが薄い、4.外果部のトリミングが大きいことを問題点として挙げ再作製を行った.再作製後のPAFOを装着した歩容は再作製前と比較すると改善されており、体幹・股・膝関節のアライメントが修正された.
【考察】再作成後は上記に述べた問題点の改善により外側壁の過度な撓みが減少し、床面に対しての下腿軸の外側方向への偏位を抑えることが可能となった.そのため、体幹・股・膝関節のアライメントが修正され大殿筋・中殿筋の収縮が起こりやすくなり、治療装具としての役割を果たしたと考えられる.
【まとめ】前額面・矢状面・水平面の3次元的なアライメントを考慮した上でPAFOの可撓性を予測する知識をもとに、装具を作製する上で歩容をふまえた完成装具の予測が重要である.そして、PTとPOでチェックアウトを行い適切な装具を提供することが必要である.今回の経緯で得られた知見を今後の装具作製に活かしていきたいと考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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