理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-026
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理学療法基礎系
機能別実効筋力によるジャンプ動作能力の検討
相澤 高治松田 雅弘
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抄録

【目的】ジャンプ動作は、ACL損傷後の競技復帰基準や体力測定の項目として実施される.種類によっては膝の伸展筋力のみならず屈曲筋力と関係のある報告があり、その研究の多くは等速性運動における筋機能との関係性を論じている.一方、熊本らは、拮抗二関節筋を含む3対6筋の協調制御モデルを提唱し、機能別実効筋力を測定する方法を開発した.本研究はジャンプ能力と機能別実効筋力との関係性を検討した.

【方法】対象者は下肢に整形外科疾患のない健常成人17名(男性12名、女性5名)、年齢19.7±0.7歳、身長169.5±8.5cm、体重64.5±10kg.全ての対象者に研究の内容を説明し、同意を得たうえで実施した.測定には、FEMS試作機一号(竹井製作所製)を使用し、ボールを蹴る足の筋力を3回測定、機能別実効筋力(一関節筋:e1股関節屈曲、f1股関節伸展、e2膝関節伸展、f2膝関節屈曲、ニ関節筋:e2膝伸展、f2膝屈曲と定義)の平均値を体重で除し、機能別実効筋力体重比として算出した.ジャンプは片脚での垂直跳び、前方ジャンプ、三段跳びの3種目の距離を測定した.統計解析はSpearmanの順位相関係数を用い、危険率5%とした.(SPSSver15)

【結果】相関が有意に認められたのは次の通り.垂直跳び:e1(r=0.82)e2(r=0.62).前方ジャンプ:e1(r=0.64)e2(r=0.64).三段跳び:f1(r=0.48)e1(r=0.77)e2(r=0.53)e3(r=0.55).

【考察】協調制御モデルによると、系先端における出力分布は六角形になることが理論的、実験的に明らかにされている.3対6筋はそれぞれ出力特異方向が存在し、e2は理論上股関節と足関節を結んだ下肢軸上に出力される.3種目とも下肢軸方向への出力が予想され、e2はその出力の大部分を担うと推測される.先行研究では、膝伸展筋力は3種目との相関が報告されており、e2が3種目と相関するのは妥当と考えられる.特徴的なことはe1が3種目で、f1が三段跳びで相関が認められたことだ.モデルでは、拮抗筋の収縮比率を変化させることで各辺上の出力方向を制御している.前方への飛び出し時、出力は前足部に移り、先の下肢軸上より前方、すなわちe1の拮抗作用により方向制御を担当する辺上に存在する.大きな加速が生じるジャンプ動作においては、安定した方向制御を可能にするこの拮抗筋群が重要になると推測され、特に垂直跳びは体幹を垂直位に保持しかつ、前方出力を作用させるe1がより重要になると推測される.三段跳びのみでf1、e3との関係性が認められたのは、三段跳びは着地を制御して遂行する特徴があり、e3の二関節筋の出力方向は着地時の床反力と向き合うことで、またf1は歩行において踵接地時に活動して衝撃緩和を行うとされることからも、両筋の着地制御能力が反映されたものと考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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