理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-050
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理学療法基礎系
ストレッチポールを用いたコアコンディショニングが健常者の手の表面温度に及ぼす効果
蒲田 和芳増田 圭太伊藤 一也浦田 侑加山内 弘喜
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抄録
【目的】ストレッチポール(SP)(LPN社)を用いたコアコンディショニング(CC)の健常者への効果として、脊椎リアライメント効果(杉野2006)、胸郭拡張機能改善(秋山2007)、肩関節の柔軟性(森内2007)、胸郭スティッフネス低下(伊藤2007)などが報告されてきた.これら以外のCCの主観的効果として「眠気」が挙げられ、その理由としてCCによる心身のリラクゼーション効果が副交感神経の活性化が推測されてきた.本研究では、CCによる手指毛細血管の拡張の有無を検証することを目的とした.研究仮説は「コアコンディショニングは手指の表面温度を上昇させる」であった.

【方法】対象者の取込基準は健常な男女、22-62歳であり、除外基準は急性腰痛、手術歴、内科的リスク、脳障害、精神障害、コミュニケーション障害がある者とした.ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した105名(男性103人、女性2人)を被検者とした.本研究は無比較介入研究であり、介入はCCのエクササイズから骨盤・胸郭リアライメント(PTR)を採用した.観察因子は手掌および手指末梢の体表温度であり、サーモグラフィー(富士通特機システム社)を用いて介入直前と介入直後に計測した.介入前の測定は、被検者が27°Cに温度管理された部屋に30分待機した後に開始した.測定値は、左右の手掌の中指延長線上手根骨部、基節骨部および末節骨部とした.各点の温度はサーモグラフィー画像より、100ピクセルの平均値を用いた.統計学的検定には対応のあるt検定を用い、有意水準はp<0.05とした.

【結果】末節骨部では、介入前30.8±1.4°C、介入後31.1±1.2°Cで、有意差が認められた(p=0.01).一方、基節骨部では介入前32.4±1.4°C、介入後32.5±1.3°C(p=0.10)、手根骨部では介入前32.9°C±1.2°C、介入後32.9°C±1.1°C(p=0.42)で、いずれも介入前後で有意差が認められなかった.

【考察】本研究の結果、ストレッチポールを用いたエクササイズは手根骨部、基節骨部と比較して有意に手指末梢部の表面温度を上昇させた.これは毛細血管密度が高い手指末梢部において、毛細血管の拡張が起こったためと推測され、副交感神経亢進の一現象の可能性がある.本研究の問題点として、男女割合が不均等で一般化に制限がある点が挙げられるが、十分な被検者数で統計学的パワーに優れる点、測定環境に配慮した点などを考慮すると信頼性の高い研究といえる.以上により研究仮説は支持されたと結論付けられる.ただし、この結果が副交感神経更新によることを証明するには、心電図波形からRR間隔のスペクトル分析などさらに詳細な検証が必要である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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