理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-112
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理学療法基礎系
足浴と足底刺激が及ぼす歩行への効果について
渡辺 孝広篠澤 毅泰辻 哲也
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キーワード: 足浴, 足底刺激, 歩行速度
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抄録

【目的】
足底への感覚刺激により立位バランスが改善するという研究や足浴をすることで下肢筋出力が増加したという研究はあるが、歩行速度への影響を検討した研究は少ない.本研究の目的は、足浴と足底刺激が歩行速度に対し、どのような影響を及ぼすかを検討することである.

【方法】
対象者は、健常成人10名(男性5名・女性5名、平均年齢27.2±5.6歳)とした.全ての被験者には実験の主旨を紙面及び口頭にて説明し、同意を得た.
1)足浴のみ、2)足底刺激のみ、3)足浴と足底刺激の組合せ、3条件の刺激について、測定時期を刺激前、刺激直後、10分後、30分後に設定し、10m歩行テストと小型加速度計(株式会社ジースポート社製 簡易姿勢計測センサ)を用いて測定した.1)2)3)のどの刺激を先に実施するかは無作為とし、3条件の測定間隔は24時間以上あけて実施した.被験者は、端座位姿勢にて一側下肢を露出した状態で刺激を加え、3条件の刺激時間を5分間として実施した.足底刺激は、踵から足先まで20回/分のペースで、タオルで足底を擦った.足浴は、温度設定を38°Cに設定し、内外果が隠れる水量で実施した.小型加速度計は、第2仙椎に着衣の上からベルトで固定し、データレコーダに転送されるように設定した上で測定した.測定値は、骨盤の前後方向への加速度の最大値を用いた.統計分析は、10m歩行速度と骨盤の前後方向への加速度について、刺激と測定時期を要因として二元配置分散分析を行い3条件の刺激、及び測定時期の有意差を検討した.有意水準(p)は5%未満とした.

【結果】
歩行速度は3条件ともに刺激前に比べて刺激直後に有意に増加し、10分、30分後には徐々に刺激前の速度に戻る傾向を認めた.3条件による有意な差は認めなかったが、1)足浴のみよりも、2)足底刺激のみ、3)足浴と足底刺激の組合せの方が歩行速度の増加が大きい傾向にあった.一方、加速度に関しては、有意な変化を認めなかった.

【考察】
本研究では足浴・足底刺激ともに、刺激後に歩行速度の増加を認めた.足底刺激では、足底を擦ることで踵や母指に多く分布している足底の固有受容器が活性化され、足圧情報がより鋭敏に入力されるようになったこと、足浴では温熱作用により筋の粘弾性が向上し、筋が出力し易くなったことが原因と推測された.一方、加速度計は刺激前後の変化を捉えることが出来なかった.今後、パラメータの選定や分析方法などについて詳細に検討していきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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