理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-114
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理学療法基礎系
ES細胞から単離したM-cadherin陽性細胞による筋形成
中川 寛紀田中 優介蜷川 菜々鈴木 麻友水野 陽太鳥橋 茂子
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キーワード: ES細胞, 骨格筋, M-cadherin
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抄録

【目的】ES細胞は様々な細胞に分化する多能性をもっているが、通常のES細胞培養法ではすべてのES細胞を骨格筋細胞へ分化誘導することは難しく、これまでに報告がない. 従って、ES細胞をそのまま分化させると、骨格筋以外の細胞も混在して形成されてしまう. 一方、カルシウム依存性の細胞間接着因子であるカドヘリンは細胞膜に発現し、選択的に隣接する同種間の細胞接着に関わっている. 骨格筋細胞はその発生の過程でカドヘリンスーパーファミリーの一つ、M-cadherinを発現し、筋芽細胞の細胞融合に先立つ細胞接着に関わっている.そこで移植を目的とした骨格筋芽細胞を単離収集するために、骨格筋細胞への分化が決定したM-cadherin陽性の筋芽細胞を単離収集し、集めた細胞がin vitroで骨格筋細胞へと分化するかどうかについて検証した.
【方法】マウスES細胞(G4-2)を未分化状態で増殖させた後、約500個の細胞を含む10μLの培養液を6日間培養皿のふたから吊り下げるHanging Drop法により胚様体を形成し、これをゼラチンコートした培養皿に移して培養を継続した. 約10-12日後にM-cadherin陽性細胞が分化していることを確認し、カルシウムキレート剤であるEDTA処理により細胞を分離し、磁気ビーズ法(MACS)を用いてM-cadherin陽性細胞を収集した. その後、10%FBSまたは5%KSRを含む培養液で陽性細胞を約1ヶ月間培養し、顕微鏡観察により細胞融合した筋管細胞の形成を確認すると共に筋特異的たんぱく質であるミオシン重鎖(MHC)による免疫蛍光染色を行った.
【結果.考察】MACS法により、約5×107個の細胞から約5×105個の陽性細胞が単離された. 顕微鏡観察により単離したM-cadherin陽性細胞は培養皿上でマウス筋芽細胞株(C2C12)と同様な形態を示し、筋芽細胞から筋管細胞そして筋節を有する筋線維への分化が確認できた. また、免疫蛍光染色によりMHCが陽性であったことから単離したM-cadherin陽性細胞がin vitroで筋細胞へと分化することが確認できた.しかし、MACS法による単離の際、少数ではあるが陰性細胞が混入する. 今後は陰性細胞を取り除き、陽性細胞の収率を上げると共に、生体内への移植を行いM-cadherin陽性細胞がin vivoでも分化能を維持しているかを検討する.
【まとめ】ES細胞からMACS法で単離したM-cadeherin陽性細胞はin vitroで骨格筋細胞へと分化した.今後、さらにin vivoでの分化能を検討する.

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© 2009 日本理学療法士協会
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