理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-012
会議情報

理学療法基礎系
中間広筋の収縮特性に関する研究
―条件の違いにおける筋厚の比較―
畠 昌史溝口 眞健長嶋 幸子征矢 直之市川 塁田川 広幸髙橋 律子柳谷 正一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】これまで大腿四頭筋に関する報告は多いが、そのなかでも深層筋であるため表在からの観察が困難である中間広筋(以下、VI)についての報告は非常に少なく、その役割は明らかにされていない.そこで今回、VIの特性を探るべく、様々な条件下での大腿四頭筋等尺性収縮(Quadriceps setting:以下setting)時のVIの筋厚を観察、測定し、股関節の肢位の違い、荷重の有無がVIの収縮に与える影響を検討することを目的とした.
【方法】対象は、本研究に対する同意を得られた健常成人15名(平均年齢28.5±5.1歳、平均BMI21.7±2.1)とした.筋厚の測定には超音波診断装置(東芝メディカル社製SSA-700Aコンベックスプローブ3.5MHz)を用い、利き足のVIの筋厚を計測した.測定位置は上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ1/2の点とした.収縮条件は、1)背臥位でのsetting、2)長座位でのsetting、3)Tilt table30°(以下、荷重下)背臥位でのsetting、4)荷重下長座位でのsettingの4種類とし、いずれの条件もsettingは最大努力でおこなった.統計処理には対応のあるT検定を用いた(p<0.05).なお本研究は、当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】各収縮条件におけるVIの筋厚は、大きい順に、荷重下長座位setting 24.1±4.1cm、荷重下背臥位setting 23.8±3.9cm、背臥位setting 22.6±3.4cm、長座位setting 21.4±3.9cmであった.
荷重下長座位settingは長座位settingと比較して有意にVI筋厚が大きかった.また有意差は認められなかったが、荷重下背臥位settingは背臥位settingと比較してVIの筋厚が大きい傾向がみられた.
荷重下背臥位settingと荷重下長座位settingとでは有意差は認められなかった.
【考察】今回の結果より、非荷重時よりも荷重時でのsetting時にVI筋厚が大きくなることがわかった.この理由として、荷重下でのsettingでは膝関節面へ圧縮力がかかることが考えられる.関節への圧縮刺激は、関節組織を支配する固有受容感覚を刺激するといわれており、荷重下でのsettingはVIを収縮しやすい条件であったと考えられる.一方、荷重下でのsettingにおいて、股関節肢位の違いによる比較では、VI筋厚に有意差は認められなかった.以上のことから、VIは膝関節への圧縮刺激により促通される筋であることが示唆された.臨床においてVIを効率的に収縮させるには、股関節の肢位の選択よりも、膝関節に圧縮力を与えながらのエクササイズを選択することが重要であると考えられる.
著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top