理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-058
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理学療法基礎系
座位における骨盤傾斜角度測定の検者内・検者間信頼性と骨盤中間位の検討
島村 亮太安彦 鉄平安彦 陽子新藤 恵一郎鈴木 達矢
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抄録
【目的】臨床や研究において座位で治療や評価測定を行うことは多い.座位姿勢の検討については様々な報告があるが、腰椎や仙椎の傾斜角度の測定には三次元動作解析装置やX線を利用したものが多く手間を要する.また、骨盤の傾斜角度を測定している報告は少なく、座位姿勢の骨盤中間位は曖昧であり、立位と比較すると十分に検証がなされていない.我々は基礎的研究として、立位でマルチ角度計(以下マルチ)とゴニオメーター(以下ゴニオ)を使用し、骨盤傾斜角度測定の信頼性を検証した.そこで、今回は同様の方法を用いて、座位における骨盤傾斜角度測定の信頼性を検証し、座位姿勢の骨盤中間位について検討した.

【方法】対象は研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い、承諾を得た腰痛の既往のない健常成人男性7名の14肢.身体特性は平均年齢28歳、平均身長172cm、平均体重62kg.測定肢位として我々が設定した骨盤中間位としての座位姿勢は、股関節と膝関節屈曲90度、足関節底背屈0度、矢状面上で耳垂と肩峰、大転子を一直線に配列させた.測定は、先行研究の立位時と同様に、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線(以下ASIS-PSIS)、上前腸骨棘と腸骨稜頂点を結んだ線(以下ASIS-IC)、腸骨稜と上後腸骨棘を結んだ線(以下IC-PSIS)の水平線からの角度を1度単位で測定した.測定は理学療法士A、Bの2名で行い、検者Bは検者Aの測定直後に同様の方法にて測定した.さらに後日、検者Aは各被検者に同様の測定を行った.統計処理は、検者間信頼性に関しては検者AとBの初回測定値、検者内信頼性に関しては検者Aの初回と2回目の測定値を級内相関(Intraclass correlation coefficiece 以下;ICC)を求めて検討した.

【結果】検者内信頼性はASIS-PSIS、IC-PSIS、ASIS-ICの順にICC=0.85、0.75、0.22とASIS-PSISで一番高い値を示した.検者間信頼性もASIS-PSIS、IC-PSIS、ASIS-ICの順にICC=0.96、0.81、0.57とASIS-PSISで一番高い値を示した.座位の骨盤傾斜角度は平均7度であった.

【考察】ASIS-PSISのICC=0.8以上の良好、IC-PSISのICC=0.7以上の普通と信頼性が高く、マルチとゴニオを用いて座位での骨盤傾斜角度を簡単に測定できることが示された.ASIS-PSISの信頼性が最も高いことから、腸骨稜は上前腸骨棘から上後腸骨棘まで続き、幅が広く、腸骨稜頂点の位置の正確性は低いと考える.さらに、上前腸骨棘や上後腸骨棘は触診しやすいためと考えた.本研究で我々が設定した骨盤中間位での座位姿勢は、骨盤傾斜角度が平均7度であり、今後の臨床や研究において座位姿勢の設定時にはひとつの指標となることを示した.
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© 2009 日本理学療法士協会
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