理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-061
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理学療法基礎系
最小可検変化量を用いた5m継ぎ足歩行テストの絶対信頼性の検討
下井 俊典
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抄録
【目的】継ぎ足歩行は, 臨床においてバランスの評価や治療に用いられている. しかし, 継ぎ足歩行を評価指標として用いる場合, その信頼性を検討した報告は少ない. また, 測定方法の信頼性を検討する先行研究の多くは, 級内相関係数(以下, ICC)などによる相対信頼性の検討が多い. そこで本研究では, 5mの継ぎ足歩行(以下, 5mTGT)テストについて, 相対信頼性とともに, 最小可検変化量(以下, MDC)を用いた絶対信頼性を検討した.
【方法】被検者はT県O市が主催する, 介護予防事業の指導者養成講座に参加した, 健常成人28名(年齢63.4±7.7歳)である. 被検者に, 長さ5m, 幅5cmのテープ上を, 片側のつま先と対側の踵を離さないように継ぎ足歩行させ, 次の2つの指標を検討対象とした. 1) 5mの継ぎ足歩行の所要時間(以下, TGT), 2) テープ上から足部が完全に逸脱した回数をミス・ステップ数として, TGTにミス・ステップ数を2倍したものを加えたもの(tandem gait index, 以下TGI). 1回目のテストから1週間後に同様の手順にて再テストを実施した. 再テスト法で得られた2つの測定値について, 相対信頼性として級内相関係数(以下ICC), 絶対信頼性として, MDCの95%信頼区間であるMDC95を用いて測定誤差の範囲を算出した. MDC95の変数である「測定の標準誤差(以下, SEM)」を次の5つの方法により算出し, それら5つのSEMから, それぞれMDC95を求めた; a) 測定値群の標準偏差とICCとを用いる方法, b) 測定値群の標準偏差とピアソンの積率相関係数を用いる方法, c) ICC(1, 1)を求める際の一元配置分散分析における, 被検者内の不偏分散を用いる方法, d) 反復測定の一元配置分散分析における, 誤差の不偏分散を用いる方法, e) テスト, 再テストの一対の測定値の差の標準偏差による方法. 本研究内容は, O市個人情報保護条例を遵守したとともに, 国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得た.
【結果】5mTGTテストのICC(1, 1)は, TGTで0.70, TGIで0.63となった. また, 5種類の方法で求めたSEMは, TGTで1.24~1.26秒, TGIで1.49~1.55となり, MDC95は, それぞれ3.4~3.5秒, 4.1~4.3となった.
【考察】ICC(1, 1)より, TGT, TGIともに「相当な」再現性が得られた. またMDC95の結果より, TGTで3.4秒以内, TGIで4.1以内の測定値の変化は測定誤差によるもので, 同値より大きな変化は「真の変化」と判断されることが明らかとなった. また, 継ぎ足歩行テストにおいて, SEMの算出方法の違いにより, MDC95は0.1秒から0.2の差異が生じることが明らかとなった.
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© 2009 日本理学療法士協会
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