理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-102
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理学療法基礎系
座面変化が立ち上がり動作に与える影響
―重心動揺計を用いた健常者での検討―
角谷 一徳原島 朗木野田 典保都丸 哲也
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抄録

【目的】
整形外科疾患の患者では、安静状態を保つためにベッド上ではエアーマットや低反発性マットを使用している反面、廃用症候群を予防するために、活動度の向上を目的に早期離床の必要性がある.しかし、整形外科疾患の患者をはじめ高齢患者の症例ではベッド上の座面が不安定である中での立ち上がりを行うのは容易ではない場面が少なくない.そこで今回は健常者を対象に、座面変化が立ち上がり動作にあたえる影響について検討を行った.
【対象と方法】
対象は身体機能に問題がない健常者20名(平均年齢27±5歳)で、本研究の意義・目的・方法を説明し、同意を得た上で計測を行った.設定した座面は、1)通常のマット2)エアーマット(ケープ社製トライセルCR281)、3)低反発性マット(パラマウントベッド社製マキシーフロートマットレスKE803)である.立ち上がり動作は、重心動揺計(フィンガルリンク株、ウィレポッド平衡機能計)を用いて評価した.被験者は、重心動揺計に足底を置いた座位をとり、座面の高さは45cmとし、歩隔や立ち上がり速度といった立ち上がり方法には制約を設けずに日常行っている方法とした.測定時、立ち上がり動作の座面変化はランダムに行い、各座面において立ち上がりを5回測定し5回の平均値を算出した.また、座面変化ごとに休息を入れ行った.重心動揺計にて、重心動揺の総軌跡長・COP面積・X偏差・Y偏差を算出した.座面変化での比較は一元配置分散分析を行い、危険率5%未満を有意とした.
【結果】
重心動揺の総軌跡長、COP面積、Y偏差においては、有意差は認められなかった.X偏差においてp=0.039(p<0.05)と有意差が認められた.また、多重比較の結果エアーマットと低反発マット間、エアーマットと通常マット間において有意差が認められた(p<0.05).
【考察】
座面変化が立ち上がり動作にあたえる影響について、重心動揺計を用いてX偏差すなわち左右への動揺に有意差を認めた.このことより、座面による変化が立ち上がり動作に影響していることが示唆された.座面の支持基底面は臀部および大腿部であり、座面の形態が変化することで立ち上がり動作中における第一相の体幹前傾から第二相の臀部離床と体幹前傾(Millingtonらによる運動区分)にかけて、重心動揺計に影響したと考えられる.武田らは、立ち上がり動作時の姿勢調節は若年者が足関節を中心にしているのに対して、高齢者は股関節を中心にしていると報告している.したがって、股関節を中心に姿勢調節を行っている高齢者は、座面が不安定であるとさらに動作が困難となり転倒リスクが上昇してしまうと考えられる.今回の研究は、若年健常者での検討であるため、今後は整形外科疾患の患者や高齢患者などを対象とし検討を行いたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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