理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-120
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理学療法基礎系
呼吸活動増大による間歇的ストレッチが脱神経横隔膜筋線維に与える影響
今北 英高並河 美香二橋 可奈小田 陽子長崎 明日香坂 ゆかり武本 秀徳三宅 毅森山 英樹金村 尚彦峯松 亮
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キーワード: 横隔膜, 脱神経, ストレッチ
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抄録
【目的】ストレッチは筋線維や軟部組織の持続的伸張による身体の柔軟性を高める1つの手法であり、筋の緊張を除き関節の可動性(柔軟性)を改善する効果が期待される.またストレッチの機械的刺激によって筋線維の肥大が促進されることが報告されている.片側横隔神経を切除した脱神経横隔膜においてFG線維は萎縮を生じるが、FOG線維やSO線維は萎縮を生じないことも報告されおり、これにはintactな対側横隔膜の収縮による間歇的ストレッチも影響すると考えられている.今回、ラット脱神経横隔膜モデルを作成し、さらに4週間の走行運動を行うことで脱神経横隔膜へのストレッチ効果を増大し、横隔膜筋線維の萎縮進行に抑制的に働きかけることができるのではないかという仮説のもと本実験を行った.

【方法】10週齢のWistar系雄ラット24匹(平均体重377.3 ± 38.8g)を用い、コントロール群、脱神経群、脱神経+走行運動群(走行群)に分けた.脱神経は頸部腹側を約4cm正中切開し,手術用顕微鏡下で左横隔神経を露出した.横隔神経線維を1~2cm切除することにより片側横隔膜の活動を停止させた.走行運動は脱神経手術後1週より速度20m/min、30分間、 6日/週のプロトコルを4週間実施した.運動終了後、in vitroにおける等尺性収縮張力、酵素組織化学染色法およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)を用いて横隔膜を分析した.また、走行群において、走行初日および走行最終日に運動前後の血中乳酸を測定し、その変化も分析した.なお、本実験は畿央大学動物実験施設倫理委員会の承認のもとに行った.

【結果】筋線維横断面積では有意な差は認められなかったが、SO線維、FOG線維ともに走行群がもっとも面積が大きい傾向を示した.また、FG線維においてはコントロール群と比較し、脱神経群および走行群は有意に萎縮していたが、脱神経群と走行群の比較では走行群の方が有意に横断面積が増大した.SDS-PAGEではコントロール群と比較してMHC1および2aが増加し、MHC2dが有意に減少した.脱神経群と走行群との間に有意な差は認められなかった.

【考察】本実験は、1.片側横隔神経切除後の脱神経横隔膜の変化と、2.走行運動負荷により呼吸量を増大させることでの脱神経横隔膜の変化を分析した.脱神経横隔膜はSO線維およびFOG線維に萎縮は認められなかったがFG線維に著明な萎縮を認めた.これは今までの先行研究と同様の結果であった.走行運動負荷を与えたことにより、FG線維横断面積の減少を有意に抑制できた.これは運動負荷を与えたことで横隔膜の収縮活動が増加し、その結果脱神経横隔膜へのストレッチ効果が増大したために引き起こされた結果であると考えられる.運動負荷を行ったことが、脱神経横隔膜により大きな間歇的ストレッチを引き起こし、その結果FG線維の筋萎縮の進行を抑制することが示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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