理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-265
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神経系理学療法
脳性麻痺児は歩行速度を増加するためにケイデンスと歩幅をどのように適応させているか
野々垣 聡長谷川 隆史内山 靖
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抄録

【目的】
歩行速度を増加するにはケイデンスか歩幅の歩行パラメータを増やす方略があるが、脳性麻痺児(以下、CP児)が歩行速度を増加する際に、ケイデンスと歩幅をどのように適応させているかの研究は少ない.近年、CP児に対するトレッドミル歩行トレーニングの有効性が報告されているが、最適な歩行プログラムを確立する上でも、これらの特徴を把握することは重要だと考える.演者らの先行研究では、CP児は、健常児に比べて平地歩行の速度が増加しても歩幅が増加しない傾向が観察された.そこで本研究では、CP児においてトレッドミルで段階的に歩行速度を増加した時のケイデンスと歩幅の変化を分析し、その関係を明らかにすることを目的とした.
【方法】
Aセンターの入所児もしくは外来児8名(平均年齢14歳5ヶ月±2歳6か月、男児4名、女児4名)を対象とした.粗大運動能力分類システム(GMFCS)は、レベルIが3名、レベルIIIが5名であった.
本研究で使用したトレッドミルは、BIODEX社製Gait Training System 2(BDX-GTM2)であった.トレッドミル速度は、0.5km/hから最大速度(走らないで歩行できる最大の速度)まで、0.5km/h刻みで設定した.各歩行速度において、対象児は手すりにつかまって1分間歩行し、ケイデンスと歩幅を計測した.その後、各歩行速度におけるケイデンスと歩幅の比(歩幅/ケイデンス)を算出し、どちらの要素が歩行速度の増加に寄与しているかを分析した.なお、計測の際には、普段使い慣れた補装具を使用した.比較のため、健常児4名(平均年齢11歳5ヶ月±4歳7ヶ月、男児1名、女児3名)においても、同様の計測を行った.
すべての対象児および保護者において、文書と口頭で研究の説明を十分に行い、同意を得た.
【結果】
CP児では、歩行速度の増加に伴い、ケイデンスは平均41.6歩/分(0.5km/h)から104.9歩/分(最大速度:平均3.4±1.0km/h)に、歩幅は平均19.4cm(0.5km/h)から49.3cm(最大速度)に増加した.また、ケイデンスと歩幅の比の推移から、歩行速度の増加に対してケイデンスで適応する児は1名、歩幅で適応する児は3名、両因子が同程度で適応する児は4名であった.これらの変化とGMFCSレベルとの関連性はみられなかった.なお、健常児ではケイデンスで適応する児は3名、両因子が同程度で適応する児は1名であった.
【考察・まとめ】
本結果から、CP児では粗大運動能力とは関係なく個々で歩行速度の増加に対してケイデンスと歩幅を適応させていることが明らかになった.CP児の歩行トレーニングにおいては、GMFCSごとにプログラムが立てられることも多いが、今回の結果から、個々の機能に着目した治療プログラムを立てる必要が示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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