理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-278
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神経系理学療法
退院時FIM運動項目の予測に関する検討
―当センター回復期病棟での検討―
皆方 伸高見 彰淑塩谷 隆信
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キーワード: FIM, 予後予測, 回復期
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抄録
【目的】
回復期リハビリテーション病棟において、初回評価の段階で精度の高い患者の予後予測を行うことは重要である.当センターでは、平成20年5月1日から回復期リハビリテーション病棟が併設された.今回、回復期病棟入棟直後の評価項目から退院時FIM運動項目得点を予測するための関連因子を検討することを目的とした.
【対象】
対象は、平成20年5月~10月の期間に、当センター回復期リハビリテーション病棟データベースに登録された患者の内、期間中に退院した脳卒中例55名(平均年齢67.6±12.9歳.男性33名、女性22名.右麻痺28例、左麻痺21例、両側麻痺2例、運動麻痺なし2例.発症から回復期病棟初回評価までの期間39.4±11.2日)を抽出し、検討した.方法は、従属変数を退院時FIM運動項目得点とし、独立変数として、年齢、発症から入棟後初回評価までの期間、初回評価での体幹・下肢運動年齢(MOA)、SIAS、患側MFS、非麻痺側MFS、最大歩行速度、運動麻痺・感覚障害・認知症・失語・失行・半側無視・全般性注意障害のそれぞれの有無(0:無、1:有)の14項目として、ステップワイズ回帰分析を実施した.半側無視の有無の判別には、BIT日本版を使用し、131点のカットオフ値を基準とした.なお対象者は、入院中の検査結果の研究使用を許可する承諾書を確認できた者に限った.
【結果】
採用された項目としては、MOA、患側MFS、非麻痺側MFS、失認の有無の4項目であった.得られた回帰式としては、退院時FIM運動項目=-16.679+0.170×MOA+0.158×患側MFS+0.839×非麻痺側MFS-7.051×失認の有無(R2乗:0.775、p<0.0001)であった.
【考察】
今回の検討から、退院時FIM運動項目の予測には、回復期入棟直後のMFSで示される両側の上肢機能、MOAで示される動作遂行能力、失認の有無が重要であることが示された.一側の上肢の運動麻痺が重度であれば、退院に向け、片手でのADL動作の獲得が必要である.それには、非麻痺側の上肢機能が保証されていなければならない.このことから、退院時のFIM運動項目に非麻痺側の上肢機能が大きく関与したものと考えた.また失認の有無が、今回の採用された項目の中でもっとも高い回帰係数であった.このことから、理学療法遂行においても問題となる失認が、ADLの自立度においても大きく左右する結果になることが再確認された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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