理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-287
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神経系理学療法
重症心身障害児・者に対する陽圧換気療法の問題点の検討
金子 断行今野 有里竹本 聡直井 富美子加藤 久美子村山 恵子北住 映二
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抄録
【はじめに】
我々は重症心身障害児・者の陽圧換気療法の効果を、多数報告してきた.近年、陽圧換気は多施設で施行され始めたが、一定のプロトコールが規定されていないため、各施設により様々な条件で行われている.今回、プロトコールの検討を目的に2000年9月-2008年10月まで陽圧換気療法を施行した患者を後方視的に調査し、陽圧換気の問題点の整理を行った.
【対象】
当センター呼吸リハ外来を受診した重症心身障害児・者200例の内、陽圧換気療法を施行した160例を対象とした.継続治療ができなかった12例を除いた148例(1歳-51歳)を最終対象とした.主要疾患分類は、脳性まひ52例、福山型筋ジス17例、デュシャンヌ型筋ジス10例、その他の筋疾患17例、脳炎・脳症後遺症8例、難治てんかん8例、その他36例.
【方法】
下記に示すプロトコールでの陽圧換気療法前後に一回換気量(TV)・SpO2・呼吸音・臨床的呼吸抑制の有無・呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)を比較した.さらに、カルテより後方視的に、陽圧換気療法の種別及び実施前後で合併症等の問題点を抽出した.研究参加への同意を口頭で得た.
プロトコール:
バギング:陽圧容量をTVの3-5倍.回数はETCO2により規定.
肺内パーカッションベンチレータ(IPV):圧・振動数・時間を患者の受容可能範囲で定め、呼吸音と排痰状態で条件を設定.また、2005年以降では必ずHardにて治療を終えるように定めた.
カフアシスト(MI-E):圧・時間は患者の受容範囲で定め、徐々に設定圧と実施時間を長くした.
【結果・考察】
当院で行った陽圧換気療法は、バギング127例、IPV 28例、MI-E 71例であった.全例、陽圧換気療法で肺の容量容圧損傷はなかった.IPVで1例、実施後に呼吸音の低下とともにSpO2が加速的に低下し、明らかな呼吸抑制を認めた.これを除き、実施後に1-2分程度のETCO2の低下があるも問題となる呼吸抑制はなく、安全に施行されていた.合併症等では、IPV後の気管出血を2例認めた.この急性期治療をした医師より2例ともIPVと気管内出血の関連性は否定された.バギングでは、1例で気管内肉芽を認めたが、耳鼻科医の診断でバギングとの関連は否定された.バギングで、難治けいれんの1例で発作の誘発を認めたため、バギングは中止した.今回、安全性を優先する故、IPV・MI-Eは患者の至適条件まで、設定できず充分な排痰効果を得られない例もあった.
以上より、陽圧換気は常に危険性を伴う療法であるも、当院のプロトコールで安全に施行されていた.今後、効果と安全性を規定するより詳細なプロトコールを定める必要性がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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