理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-322
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者における支持性と移動能力の関連性の検討
―立位時麻痺側最大荷重比をもちいて―
福永 暁濱砂 菜保子前田 真季
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抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者の移動能力において、歩行補助具使用の有無や種類また介助量を検討する際、麻痺側の支持性の評価はそれらを決定する重要な要素の一つである.しかし、本要素を基にした移動手段の選定および介助量の変更などの客観的な評価方法は確立されておらず、歩行補助具を適切な時期に処方する判定は、患者の主観や処方者の経験に基づいて行われる事が多いのが現状である.そこで今回、安価で簡便かつ臨床場面で使用頻度の高い市販体重計(株式会社タニタ製HA622)から算出される「荷重比」に着目した.本研究では下肢支持性の定量的評価とされる麻痺側荷重比が、歩行能力や階段昇降能力と関連性があるかどうかを検討し、さらにこれらの移動能力の判断を行う際の指標となるかどうかについて検討したのでここに報告する.
【対象】当院に入院中の明らかな高次脳機能障害のない脳卒中片麻痺患者36名(男性26名、女性10名、平均年齢64.5±11.6歳).側性の内訳は、右片麻痺22名、左片麻痺14名.研究内容について被験者全員に口頭で説明し、書面にて同意を得た.尚、介助を行わず静的立位保持が可能であることを条件とした.
【方法】麻痺側最大荷重量、timed up and go test(TUG)、階段昇降能力を測定した.麻痺側最大荷重量の測定は、体重計2つの上に立位をとらせ、介助は行わず麻痺側に最大限荷重をかけるよう指示し、その際の荷重量を読み取った.麻痺側最大荷重量およびTUGはそれぞれ計3回実施し、平均値を測定値とした.さらに、麻痺側最大荷重量を体重で除して標準化した値を麻痺側荷重比とした.order effect を考慮し測定の順は被験者毎に変え、測定の間には十分な休憩を取った.階段昇降能力は、当院病棟階段の10段を評価した.測定結果を歩行能力(独歩・T-cane gait・Q-cane gait)の3分類および昇降補助レベルにより点数化を図った.麻痺側最大荷重比、TUG、歩行能力および階段昇降能力について相関分析を行い、歩行能力および階段昇降能力における補助具使用レベル別に分けた群間の評価結果について、三元配置分散分析を行い多重比較検定にはFisherのPLSDにより関連性を比較検討した.
【結果】歩行能力・階段昇降能力において強い相関関係(r=0.75)を認めた.また、歩行能力・階段昇降能力における補助具使用レベル別に分けた群間については、麻痺側最大荷重比・TUGの各群間で有意差(P<0.001)が認められた.
【考察】今回の結果から立位時麻痺側荷重比を測定することは歩行能力・階段昇降能力を予測するための有用な指標(state-marker)である可能性が示唆された.このことより、臨床において客観的な指標である荷重比を用いることは、歩行能力・階段昇降能力の補助レベルや時期を判断でき、より詳細に支持性の変化を知ることが可能であると考えられる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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