理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-274
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神経系理学療法
重症から自宅復帰したギランバレー症候群の1例
西山 保弘中園 貴志香田 三郎前田 豊樹工藤 義弘矢守 とも子尾山 純一
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抄録
【はじめに】
ギラン・バレー症候群(以下、GBS)は、一般に予後良好な疾患とされるが、25~50%に1年以上経過後も著明な運動麻痺が残存するともいわれている.今回、GBSで四肢麻痺による重度の後遺症を呈しながらもADL改善、歩行獲得を得て自宅復帰した1例の臨床経験を報告する.
【症例紹介】
インフォームドコンセントを行い承諾を得た74歳男性.身長168cm、体重64.3kgである.2006年9月29日両手の脱力出現、A病院で経過観察するが四肢麻痺の症状よりB病院に10月3日に入院する.その後3日間で完全四肢麻痺状態になりB病院のICUで人工呼吸器による呼吸管理を行う.四肢は完全弛緩性麻痺.2007年3月8日気管切開孔閉鎖、座位保持可能なレベルに回復したことより4月18日リハビリ目的で当センターに入院する.入院時身体症状は、HugherのFunctional grade4で両上肢はMMTで僧帽筋4、他は1~2、肩と指先が少し動く程度、下肢は介助にて膝立保持可能なレベルで筋力はMMTで2~3、座位は保持可能であった.右足は30°尖足、左足は30°内反尖足、両肘・手指の屈曲制限、握力両側0kg.上肢機能低下により寝返りは不可.日常生活活動(ADL)は、Barthel Index(BI)10点(排尿、排便のみ各5点)の状況であった.
【入院経過と介入方法】
2007年4月18日理学療法開始.尖足、手指、肘のROM制限の改善と立位保持に必要なギプス用レナサーム材質で装具作製を行い、ROM改善を図る.軟部組織の徒手療法、手浴を開始.その後、作業療法開始.5月17日寝返り可能.腹臥位不可.6月7日歩行器で50m歩行可能.起立訓練を追加した.運動強度は動脈血酸素飽和度(Spo2)とボルグ指数を用いてややきつい範囲内とした.7月26日膝伸展筋力右4.6kg、左5.6kgまで回復する.8月1日温泉プール浴を開始し、歩行バランスが安定する.8月28日プラスチック短下肢装具作製.独歩で10m歩行可能になる.膝伸展筋力右6.8kg、左7.1kgまで改善する.9月27日BI50点、内反尖足部に疼痛出現.10月29日膝伸展筋力右11.8kg、左11.2kgに回復する.10m歩行8.7秒、Timed up and go test 13.7秒.11月30日杖装具なし独歩で屋外1km歩行可能.膝伸展筋力右16.2kg、左18.4kg.BI85点、ADLは箸が持てない、浴槽に入れない、靴下を履けない、床からの立ち上がり不可などの活動制限が残るも階段昇降可能.握力右5.5kg、左5.2kgまで回復した.HugherのFunctional gradeは1となった.
【考察とまとめ】
本例は発症から四肢麻痺までが3日と短期間であり重篤な後遺症を持つ遅延型GBSであった.しかし、患者の利点はうつ症状や認知症や自律神経障害はなく回復への意欲が高かったことである.遂行上再考に難渋したのは、ADL自立に必要な物理的刺激の選択、ROM確保、上下肢の多関節拘縮改善と弛緩性麻痺から随意性回復、運動強度と筋力増強への介入方法であった.
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© 2009 日本理学療法士協会
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