理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-260
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神経系理学療法
視床・被殻出血における離床訓練開始時パラメータと短期アウトカムの関係
山下 豊堀場 充哉長谷川 竜也田中 照洋坪井 理佳和田 郁雄
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キーワード: 脳出血, 離床, アウトカム
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抄録
【はじめに】急性期型医療機関における脳卒中リハビリテーションはリスクを管理しつつ廃用を予防し可及的早期に離床を確立することを目的としている.そして早い時期からの機能予後予測は適切な回復期リハビリテーションの選択に影響する.そこで当院退院時のADLレベルを短期アウトカムとして脳卒中後の離床訓練開始時パラメータとの関係性を明らかにすることを本研究の目的とする.
【対象】視床または被殻出血にて当院に入院しリハビリテーションを行い発症後3週間以内に離床訓練を開始した51例(男性31例・女性20例、年齢65.8±11.9歳)を対象とした.なお離床訓練は端坐位訓練開始時と定義し、その開始は間嶋の基準に従い意識レベルがJCSでII-10以上、バイタルサインが概ね安定していることとし、遷延性意識障害例と肺炎など合併症を生じた例、死亡例は除外した.
【方法】当院退院時のmodified Rankin Scale(mRS)を短期アウトカムとした.そして離床訓練開始時のパラメータとして年齢、血腫量、離床訓練開始時の安静時収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧、平均血圧、心拍数、発症から離床訓練開始までの日数(日数)、Japan Stroke Scale-motor function(JSS-M)、病識の有無、血清データからクレアチニン、尿素窒素、総蛋白、ヘモグロビン、グルコースをとりあげ、短期アウトカムとそれぞれSpearmann符号化順位相関を求め、有意であったものをさらに重回帰分析し短期アウトカムと有意に関連したパラメータを選択した.統計ソフトにはSPSSを用い、5%を有意水準とした.
【結果】対象者の発症から離床訓練開始までの日数は5.9±4.3日、入院期間は36.7±23.3日、退院時のmRSは0-3:20例、4:17例、5:14例であった.短期アウトカムとSpearmann符号化順位相関で有意に相関したパラメータは、年齢(r=0.353)、血腫量(r=0.584)、SBP(r=0.286)、日数(r=0.623)、JSS-M(r=0.835)、病識の有無(r=0.594)、血清尿素窒素(r=0.395)であった.重回帰分析では上記のパラメータからSBP(r=0.27)とJSS-M(r=0.792)が選択された.
【考察】脳卒中リハビリテーションでは発症後可及的早期より離床訓練を開始しADLを高めていくことが定着している.しかし早期に開始したことが必ずしもADL改善に結びついていないときもあることを実感する.今回の検討ではADLを短期アウトカムに設定したこともあり運動機能の要素の影響が大きいことが予測され、実際、重回帰分析の結果でもJSS-Mがもっとも大きな因子として選択された.対象例を錐体路障害を主とする視床あるいは被殻の出血に限定したことも大いに関係していると思われる.しかしながら単回帰分析では血腫量も中等度の相関を示しており病巣の大きさが機能予後をある程度規定していることが伺えた.また病識の有無も中等度の相関を示しており運動障害以外の要素も見逃してはいけないことを示唆していると考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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