理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-351
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骨・関節系理学療法
ストレッチポール上でのエクササイズ中の腹横筋活動
―予備研究―
新谷 大輔古川 由美子澤田 尚幸上村 龍輝杉野 伸治蒲田 和芳
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抄録

【背景】腹横筋は骨盤および下部体幹の安定筋として注目されている.バランスボールは、その効果的な訓練方法(Ainscough-Potts 2006)とされているが、胸椎伸展など姿勢改善効果は小さい.一方、ストレッチポール(SP)は胸椎伸展などのリアライメント効果が得られ(杉野 2006)、SP上の呼吸エクササイズやバランスエクササイズにより腹横筋の賦活が得られると言われている.しかしSPの腹横筋活動に対する効果は実証されていない.本研究の目的は、各種エクササイズ中の腹横筋厚が、床上背臥位(S)よりもSP上基本姿勢において増大するか否かを検証することである.
【方法】ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た1名(32歳、男性)を対象とした.エクササイズ中の腹横筋厚をS、SPの順で超音波(東芝Aplio、3.5MHzプローブ、Bモード)にて計測した.エクササイズは安静時(R)、深呼気(DE)、右上肢挙上(RU)、左上肢挙上(LU)、右下肢挙上(RL)、左下肢挙上(LL)チンイン(CI)ペルビックチルト(PT)とした.計測点は右側の肋骨辺縁と腸骨稜の中点(金子 2005)とした.
【結果】腹横筋厚(S/SP;単位mm)はR(31/36)、DE(54/72)、RU(30/37)、LU(35/37)、RL(43/49)、LL(43/54)、CI(30/31)、PT(64/99)であった.全項目においてSよりSPが高値であり、特にPTで35mm、DEで18mmと差が著明であった.
【考察】本研究の結果、1名の対象者においてSPにおいて腹横筋の収縮率が高いことが示唆された.先行研究では、バルーン上での対側の下肢挙上(Ainscough-Potts 2006)、最大呼気時(Misuri 1997)、安静呼気終末(金子 2005)、バルーン上での風船膨らまし運動(上村 2007)などで腹横筋厚の増大が確認された.以上より、呼吸運動および不安定環境下でのエクササイズが腹横筋活動の賦活に効果的であると解釈される.ただし、SPによって誘導される胸椎伸展・胸郭挙上・仙骨後傾などのアライメント変化が上記の変化に関与したか否かは定かではない.超音波計測による筋厚測定の正確性については平均1.0mm(range 2.3-4.9%)と多少の誤差がある(Riccabona 1996)が、今回の差を検出する上では十分な精度と言える.以上より、今後実施されるSPを用いた腹横筋活動に関する研究では、SP上の不安定環境と呼吸運動を組み合わせたエクササイズの開発及びその検証が必要と考えられる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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