理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-390
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骨・関節系理学療法
腰痛分類の一案
―後屈時腰痛群に着目して―
亀山 顕太郎岩永 竜也
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抄録
【目的】慢性的な腰痛は、動作開始時痛や歩行時痛、また同一姿勢を持続したときの痛みなど人によって様々である.さらに、前屈で疼痛が出現する腰痛もあれば、後屈で疼痛が出現する腰痛もある.また、立位および端座位で疼痛が生じるものもあれば、立位でのみ疼痛が生じる腰痛など、疼痛が生じる物理的ストレスや肢位も患者によって異なることを経験する.よって、慢性腰痛を評価・治療・研究していく中で、すべてを腰痛と一つにするのではなく、疼痛が出現する状態やストレス方向などで、いくつかのグループに分ける必要があると考える.本研究の目的は、体幹後屈時に疼痛が生じる後屈時腰痛群に関して、肢位と骨盤傾斜角度の条件を変えた後屈動作で疼痛が生じるか否かを分類し、各群での割合を求め、腰痛分類の一案を報告することである.
【方法】対象は、後屈時腰痛患者20名.対象を「立位での後屈のみ疼痛がある患者」と「立位および端座位での後屈でも疼痛がある患者」と「端坐位での後屈のみ疼痛がある患者」に分類した.また、端坐位での後屈動作で疼痛が出現する患者を対象に、端座位での後屈時に骨盤傾斜角度を前傾に誘導することで、疼痛が軽減する患者を「骨盤前傾誘導有効群」、疼痛が増強する、または変化がない患者を「骨盤前傾誘導非有効群」として割合を求めた.
【結果】後屈時腰痛患者(20名)の中で「立位での後屈時のみ疼痛がある患者」は5名(25.0%)、「立位および端座位での後屈時でも疼痛がある患者」は13名(65.0%)、「端坐位での後屈時のみ疼痛がある患者」は2名(10.0%)であった.また、端座位での後屈時腰痛がある患者(15名)の中で、「骨盤前傾誘導有効群」は9例(60%)、「骨盤前傾誘導非有効群」が6例(40%)であった.
【考察】今回の研究より、後屈時腰痛患者の中でも、様々な分類が可能であることが分かった.とくに、立位だけではなく端座位での後屈でも疼痛がある群が多かったが、この中の半数以上は骨盤前傾を誘導することで疼痛が軽減している.これは骨盤前傾の機能低下が、腰痛の一要因になっていることを示していると考える.逆に、骨盤の前傾で痛みが増強する「骨盤前傾誘導非有効群」に関しては、骨盤前傾の機能低下以外に原因があることを示すと推測される.また、端座位での後屈では疼痛が生じずに、立位での後屈のみ疼痛が生じる患者に関しては、端坐位と立位の肢位の違いである股関節角度や足部による荷重コントロールが腰痛に影響していることがうかがえる.このように、腰痛を導きだしている個々の原因をより絞り込むには今回の分類は有効であると考える.今後は症例数を増やし、傾向をさらに明らかにしていきたい.
【まとめ】後屈時腰痛患者を、疼痛が生じる肢位や骨盤傾斜角度に着目して細分化を行うことで、個々の腰痛が生じる原因を絞り込む一助になることが示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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