理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-425
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骨・関節系理学療法
ボート競技における障害の特異性に関するアンケート調査
二宮 悠鶴埜 益巳
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抄録
【目的】ボート競技の1つであるスカルは坐位で左右対称の全身運動を行う競技であり、高負荷な運動を繰り返し行う必要がある.その運動から障害は体幹部に集中すると考えられるが、その報告は少ないため、本研究でその障害の特異性や外傷前後の状況について調査した.
【方法】作製したアンケート用紙を4高校と2大学、3実業団の9施設のボート部に配布し、無記名による封筒法にて回収した.アンケートに関する説明と同意は書面にて実施し、同意の得られたもののみ対象とした.得られた対象者は105名で、回収率は70.0%であった.調査期間は平成20年4月14日から7月21日とした.調査内容は、現在の痛みの有無とその部位、過去の外傷歴とその部位、受傷機転、競技への制約、受診歴、通院状況、非受診の理由、自己身体管理の有無と内容、外傷の予測とその時期や状況、他者の外傷や痛みについての思考や自分の外傷に対する想定で、選択回答による項目が8項目、自由解答による項目が8項目の計16項目であった.アンケート各項目に関する解析には、Kruskal Wallis検定、各項目内の関係についてはMann-WhitneyのU検定を用いた.
【結果】対象者の内訳は男性67名、女性38名で、平均年齢は19.9(±2.9)歳であった.痛みのある部位や過去の外傷歴で腰部が痛み全体の34.2%、外傷歴全体の35.7%を占め、回答のあった他の部位に比べて有意に多かった(p<0.05).受傷機転は主に漕艇中やウエイト・トレーニング中であり、競技への制約を認めた.受傷歴より自身で大きな問題とせずに多くは通院せず、続発する障害の原因となっていた.自己身体管理では予防を81.1%が行い、その多くはストレッチであり、その方法は主に部活動にて指導されたと回答した.自身の外傷に関する予測は42.5%に認め、寒さで身体が固くなるという理由が多く、時期は冬場に集中した.他者の外傷や痛みについての思考では、準備運動不足を主な原因として挙げ、自分の外傷に対する想定では、漠然とした不安や積極的な治療を望んだ.
【考察】ボート競技は腰部に障害が集中すると示唆された.しかし、その対策は万全とはいえず、特にその準備運動やウエイト・トレーニング、実際の動作に関する指導は障害予防の観点から十分に行われておらず、障害に発展することが示唆された.また、その障害に対する認識は強いとはいえず、慢性化し競技の中断や競技能力の低下につながると考えられた.外傷経験の無い者も多くは予測しているものの、その対策は十分ではないと考えられた.理学療法士が関わることで、競技に特異的な障害の予防方法や運動方法やその負荷についてなど、多くの提案が可能となることが示唆された.ただ、身体管理には気温や天候などの環境的側面も十分に考慮が必要である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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