理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-459
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骨・関節系理学療法
高校競技選手における膝前十字靭帯再建術後の筋力回復に影響を与える因子
野原 英樹平川 善之北條 琢也上堀内 三恵宮前 雄治元尾 篤原 道也花田 弘文
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抄録
【目的】高校競技選手における前十字靱帯(以下ACL)損傷は、受傷時より残された高校生活の期間で目標となる復帰時期が決まっているものが多い.目標時期にスムーズな競技復帰を果たすためには十分な筋力回復が不可欠である.当院では術後、定期的に筋力評価を行い、練習などの再開時期決定の目安の一つとしているが、術後6ヶ月時までに十分な筋力の回復が得られず練習参加への遅延やパフォーマンス向上に苦慮する選手が散見された.そこで今回、どのような因子が高校競技選手の筋力回復に影響を与えるかについて調査した.
【対象】平成17年3月から平成20年3月までに当院にて自家膝屈筋腱を用いた鏡視下解剖学的2ルートACL再建術を施行した高校競技選手43名(男性7名、女性36名、手術時平均年齢16.2±1歳).
【方法】調査項目を以下に示す.(1)術前、術後3ヶ月の筋力値(2)受傷から手術までの日数(3)受傷機転(接触型・非接触型)(4)半月板縫合の有無(5)関節弛緩性の有無(6)術前患側過伸展膝(10度以上)の有無. (1)(2)においては各項目と6ヶ月時点での筋力値との間でPearsonの相関係数を求め有意差を検定した.指標となる筋力値の測定方法は、等速性筋力測定装置(CYBEXNORM)を用いて求心性に膝伸展、屈曲運動を角速度60度/秒、180度/秒で測定し最大トルク体重比を算出し、患側の筋力を健側の筋力で除した健患比を用いた.(3)~(6)においては対象者を、6ヶ月時の健患比が85%以上の回復良好群21名(男性4名、女性17名)、85%以下の回復不良群22名(男性3名、女性19名)の2群に分類し、各群間でカイ二乗検定を用い比較検討を行った.有意水準は5%未満とした.なお本調査は当院倫理審査委員会の承認を得て行われた.
【結果】(1)術後6ヶ月筋力値との有意な相関を認めたのは、術前は角速度60度/秒で伸展(r=0.53)、屈曲(r=0.31)であった.術後3ヶ月で角速度60度/秒伸展(r=0.60)、屈曲(r=0.47)、角速度180度/秒伸展(r=0.55)、屈曲(r=0.33)であった.(2) 受傷から手術までの日数では相関がなかった.(3)受傷機転(4)半月板縫合の有無(5)関節弛緩性の有無では2群間に有意差が認められなかったが、(6)術前患側過伸展膝の有無で回復不良群において過伸展膝を有する比率が有意に高かった.
【考察】6ヶ月時の筋力回復に影響を与える因子として術前の60度/秒筋力、術後3ヶ月の筋力、術前患側過伸展膝の有無が考えられた.6ヶ月時の筋力回復には術前に十分な膝機能を回復させるためのアプローチが重要であり、術前患側過伸展膝を有する者は筋力回復の影響を念頭に置き術後プログラムを作成する必要性が示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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