理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-466
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骨・関節系理学療法
人工膝関節全置換術前後における膝伸展筋力、バランス能力、歩行能力の推移
飛永 敬志宮崎 千枝子山田 智教安村 建介大関 覚
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抄録
【目的】変形性膝関節症(膝OA)では、人工膝関節全置換術(TKA)を受ける高齢者が増加している.膝伸展筋力だけでなく急性期からバランス能力の推移を把握することは、運動機能評価上極めて重要と考えられる.本研究の目的は、TKA患者の膝伸展筋力とバランス能力及び歩行能力の指標に用いられている開眼片脚起立時間及びTimed up and go test(TUG)の推移から、リハビリテーション(リハ)必要期間について検討した.

【方法】2008年10月までの13ヶ月間に膝OAで片側TKAを施行した症例のうち、術前後に測定が可能で再置換術例を除いた19例(男:2、女:17)を対象とした.平均年齢は73.7±6.0歳(60~82歳)であり、術野の展開はmid-vastus approachで行った.リハは手術翌日から関節可動域運動、筋力増強運動、及び荷重制限無しで歩行練習を開始した.手術から退院までの平均期間は、23.3±4.4日であり、退院後必要に応じて週1〜2回の外来リハを行った.膝伸展筋力は、Biodex System3を使い,isokinetic 60 deg/secで最大筋力を、術前、術後1、3、6ヶ月後に測定した.バランス能力は開眼片脚起立時間、歩行能力はTUGをストップウォッチにて同様に測定した.統計処理はSPSS Ver.15を用いて測定数値を混合モデルで一元配置分散分析を、Bonferroni多重比較によって線型解析をそれぞれ行った.本研究は、個人が特定できないことを前提に倫理規定に準じて行っている.

【結果】術側膝伸展筋力は、術前32.1±14.8Nm、術後1ヶ月時29.9±9.1、3ヶ月時42.5±15.3(p=0.006)、6ヶ月時43.2±11.4(p=0.005)で、術後3ヶ月以降より筋力増強を認めた.術側開眼片脚起立時間は術前13.9±20.0sec.に比べ、術後1ヶ月時15.3±22.6、3ヶ月時32.0±37.9(p=0.029)、6ヶ月時32.2±45.4(p=0.050)で、術後3ヶ月以降より測定時間の延長を認めた.TUGでは、変化を認めなかった.

【考察】TKA後の術側膝伸展筋力及び開眼片脚起立時間は、術後3ヶ月以降に改善を認めた.術後1ヵ月後では改善を示さないので、退院後リハの継続が重要である.術後TUGには改善を認めなかったが、今後歩行・立ち座り・方向転換の要素それぞれを、質的に検討することが必要と考えられた.

【結語】TKA後の膝伸展筋力とバランス能力(開眼片脚起立時間)は、リハ経過観察として重要な指標であり、術後3ヶ月未満では退院後も外来リハを継続させる必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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