理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-468
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骨・関節系理学療法
人工膝関節全置換術後における膝関節屈曲筋力の回復に必要な要素について
土居 誠治東 裕一藤原 雅弘
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抄録

【はじめに】人工膝関節全置換術(以下TKA)後の症例は洋式生活で立ち上がり動作を行うために、深屈曲角から大腿四頭筋と同時収縮する膝関節屈曲筋力の獲得は重要だと考えられる.今回、膝関節屈曲筋群における筋力回復に必要な要素を表面筋電図、筋力値から検討したので報告する.
【対象】対象は重篤な既往や合併症がない内側型変形性膝関節症とし、術前より膝内側部に強い荷重時痛が発生しているが歩行可能な症例でparamedian approach にてTKA施行となった29名(男性6名、女性23名)で平均年齢は75.3±7.1歳であった.全例で今回の研究の目的と方法を説明し同意を得た症例である.
【方法】術前、術後6WにANIMA社製ミュータスF-1を用いて45°屈曲位(以下45°)、90°屈曲位(以下90°)で、等尺性最大随意収縮時の筋力を腹臥位にて各3回測定した.同時に、半腱様筋(以下M-ha)、大腿二頭筋長頭(以下L-ha)を被検筋として表面筋電図を測定し、体重比から高値を示したデータをそれぞれ採用した.表面筋電図の測定はSYNA ACT MT11を使用した.その後、多用途生体情報解析プログラムBIMUTASに取り込み、波形の安定した3秒間の最大随意収縮時の筋電図積分値を45°を100%として正規化し90°(以下%IEMG)にて検討した.同時に高速フーリエー変換にて中間周波数(MdPF)を算出した.分析は術前後における45°と90°の筋力値の推移、筋別の%IEMGの変化をWilcoxoの符号付順位和検定を用いて比較した.また、筋力値が術前を越えた症例と越えなかった症例との間で、45°と90°のMdPFの差をMann-Whitney’s検定で比較検討した.有意水準は5%とした.
【結果】術後の筋力値を術前と比較すると90°では有意に低下していた.また、術後90°で術前の筋力値を超えた症例は29例中7例であった.M-haとL-haそれぞれの術前後における%IEMGにほとんど差はなく、筋力値の上昇と関係性のある結果も認められなかった.しかしながら、術後の筋力値が術前を越えた症例は45°と比較して90°で有意にM-ha、L-haのMdPFの上昇が認められた.
【考察】術後の屈曲筋群では術創や大腿四頭筋のスパズムの影響で可動域の獲得が遅れ90°での筋力再獲得は困難となる事が示唆された.また、術前後における%IEMG有意差がなく筋力値との関係性も認められない事や、90°でMdPFが上昇した症例では筋力値の上昇が認められた事などから、筋の量的な問題に加えて発火頻度などの筋の質的な影響も筋力回復に必要な要素であり、この事を術後の運動療法実施時に考慮すべきではないかと考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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