理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-471
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骨・関節系理学療法
骨間距踵靱帯の形態と機能について
―遺体解剖による検証―
壇 順司高濱 照
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抄録

【はじめに】距骨下関節(ST)の運動軸(Henke軸)は,距骨頭と踵骨外側を通り,内・背側から外・底側に向い,関節内では中距踵関節面のすぐ外側を走行していると言われている.実際にSTを回内外させると中距踵関節面が支点となり前距踵関節面と後距踵関節面が反対方向に動くことで関節運動が円滑に維持されている.そのためには運動軸(支点)の位置を制御する必要があると推察される.ST関節内には骨間距踵靱帯(TCIL)が存在することから,TCILがこの制御に関与する可能性があるため,TCILの形態と機能について遺体を用いて検証したので報告する.
【対象】対象は熊本大学医学部形態構築学分野に献体された遺体で,教授の承認を得て解剖を行った左4足部を用いた.足関節周囲の軟部組織を除去し,距骨と踵骨をTCILのみで連結した4標本を作製した.
【方法】2標本は距骨と踵骨を分離し,靱帯の形態を確認した.次に距骨溝前縁でTCILの付着している境界で距骨を切断したもの(標本A)と距骨溝後縁でTCILの付着している境界で距骨を切断したもの(標本B)を作成した.A・Bを用い靱帯の線維方向および踵骨に対して距骨を回内外させた時の機能を調べた.A・Bの標本も最終的には距骨と踵骨を分離し靱帯の形態を確認した.
【結果】TCILは前部と後部の線維束に分かれていた.足根洞の内外側間を大凡3等分した場合,前部線維束は足根洞前縁で外側1/3(前外線維)から中1/3(前中線維)に存在していた.前中線維が最も強靱であった.後部線維束は足根洞後縁で中1/3(後中線維)から内側1/3(後内線維)に存在する広い線維タイプ(Wtype)(2足部)と中1/3のみに存在する狭い線維タイプ(Ntype)(2足部)があった.線維方向は,前外線維:前内上方,前中線維:後外上方,後中線維:前内上方,後内線維:後外上方に走行していた.回内外時の機能は,回外では前中線維が緊張して他の線維は弛緩した.回内では後中線維と後内線維(Wtypeのみ)が緊張して他の線維は弛緩した.
【考察】まずST回外では,中距踵関節を中心とした運動を維持するため,運動軸に近い前中線維が緊張し,運動軸の位置が変わらないように制御していると考えられる.次にST回内では,後中線維や後内線維(Ntypeは後中線維)が緊張することで回外と同様のことが考えられる.但しこの運動の最終域では,距骨外側突起と踵骨溝外側部が接するので,仮に回内が強要された場合には,この部位が支点となり,ST関節内側部を引き離すようなストレスがかかることが推察される.このような場合,Wtypeでは後内線維にて制御可能であるが,Ntypeではそれが無いため関節の不安定性を生じやすく,三角靭帯に負担がかかることや踵骨の外反角度に影響することが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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