理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-351
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骨・関節系理学療法
高齢者における移動手段と踵骨超音波伝播速度(SOS)との関係
辻井 温子原田 香織峯松 亮
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抄録
【目的】高齢者に対する骨量減少の予防策には、骨への荷重や衝撃が有効とされており、身体活動量の多いほうが骨量は保たれているとの報告がほとんどである.本研究では、高齢者の日常生活の自立度や移動手段(独歩、杖、歩行器、車椅子)と踵骨超音波伝搬速度(SOS)との関係を調査し、加齢に伴う骨量の減少度を遅らせるにはどのような荷重機会が望ましいかを検討することを目的とした.
【方法】某介護老人保健施設(以下,老健)に入所している65歳以上の高齢者153名(男性35名、女性118名、平均年齢:83.6歳(65~100歳) )を対象とした.日常生活の自立度はBarthel Index(BI)を用いて評価し、移動手段などを聴取した.また、対象者の踵骨超音波伝搬速度をCM-100(古野電気社製)にて測定した.なお、本研究は,全ての対象者のインフォームドコンセントを得た上で実施した.統計解析は、年齢、BIとSOSとの相関をみるためにスピアマンの順位相関係数検定を用いた.また、日常の移動手段(独歩、杖、歩行器、車椅子)の違いによるSOSの差を一元配置分散分析および多重比較(Tukey-Kramer法)にて調べた.P<0.05で有意差ありとした.
【結果】年齢とSOSとの間には相関は認められなかった.BIとSOSとの間には相関が認められた(r=0.270、p<0.001).また、移動手段間のSOSには有意な差が認められ(p<0.005)、独歩の対象者は杖、歩行器、車椅子を使用している対象者よりも有意に高値を示した.
【考察】女性と男性では骨量減少の過程に違いはあるが、60代を過ぎると加齢による骨量減少のため老人性骨粗鬆症へと進行する可能性がある.本研究では、65歳以上の高齢者を対象としたため、骨量減少が一定化していること、移動手段が年齢に関係していないことから年齢とSOSとの間には相関が認められなかったと考えられる.一方、BIとSOSとの間には相関が認められており、日常の移動手段によっても独歩群は杖、歩行器、車椅子群よりもSOSは有意に高値を示した.このことは、BIでは移動手段において点数の差が現れやすく、加齢による骨量減少が進行しながらも、独歩の対象者では骨への荷重・衝撃が加わることにより骨量減少度が小さくなったためと考えられる.以上のことから、荷重機会の多寡が骨量減少度の大小に影響すると考えられた.
【まとめ】本研究では、BIとSOSとの間には相関が認められ、日常の移動手段においては、独歩群は杖、歩行器、車椅子群よりもSOSは有意に高値を示した.高齢者においては、骨量減少度は荷重機会に影響される可能性が示された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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