理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-362
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骨・関節系理学療法
高齢者に対する筋力トレーニングの敏捷性と反応時間への効果
山本 圭彦坂光 徹彦宮﨑 孝拡山根 寛司矢野 慎也平山 真由子近江 春香福原 千史浦辺 幸夫
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抄録
【目的】高齢者の転倒予防では下肢筋力やバランス能力だけでなく敏捷性と全身反応時間の改善が求められている.転倒予防のための運動介入は下肢への筋力トレーニングやバランスエクササイズなどが実施されているが、敏捷性や全身反応時間への効果は十分に明らかとなっていない.今回は高齢者に対して筋力トレーニングを3ヶ月間実施し、敏捷性と全身反応時間への影響を確認する.【方法】対象は日常生活を制限するような運動器疾患を有していない65歳以上の高齢者15名である.運動は家庭での15分間の筋力トレーニングを週3回実施するよう指導した.2週間に1回の頻度で運動方法と実施頻度の確認のフォローアップを実施した.運動内容は、OKCエクササイズとしてブリッジ、シットアップ、股関節外転運動、CKCエクササイズとしてフォーワードレッグランジ、カーフレイズの5種類の筋力トレーニングを指導した.回数はそれぞれ10回を2セットと設定した.運動前後に効果判定として筋力、敏捷性、全身反応時間を測定した.また運動機能の評価として片脚立位時間と10m歩行時間を測定した.筋力は大腿四頭筋の膝関節屈曲90°位での最大等尺性筋力(以下、大腿四頭筋筋力)をPower TruckII(OG技研)を用いて測定した.敏捷性と全身反応時間の測定はXavix AERO(XaviX PORT)を用いた.敏捷性は立位肢位にて10秒間で出来る限り素早く足踏みをしてもらいステップ数(以下、下肢ステップ数)を計測したもので評価した.全身反応時間は光刺激によるジャンプで足尖がマットから離れるまでの時間を測定した.すべての項目は3回ずつ測定し平均値を使用した.統計処理は3ヶ月間の運動前後の大腿四頭筋筋力、下肢ステップ数、全身反応時間、片脚立位時間、10m歩行時間をそれぞれwilcoxson符号付順位検定にて算出し5%未満を有意とした.なお、本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】運動前後で大腿四頭筋筋力(17.2%)、下肢ステップ数(9.3%)、全身反応時間(29.3%)、片脚立位時間(49.9%)、10m歩行時間(20.2%)のすべての項目において有意に向上を認めた(p<0.05).【考察】筋力トレーニングの実施により、敏捷性が9.3%、全身反応時間が29.3%と向上を認め、興味深い結果が得られた.敏捷性と全身反応時間の構成要素は、刺激閾値、中枢神経での判断処理時間、神経伝達速度、筋収縮などにより構成されており、今回、敏捷性と全身反応時間が向上した要因としては筋収縮能力の向上によるもの推察される.高齢者は若年者とは異なり、筋力トレーニングによって敏捷性と反応時間の能力が向上することが確認できた.今後、運動方法を検討することでより効果的なプログラムが提供できるのではないかと考えられる.【まとめ】高齢者に対する筋力トレーニングの敏捷性と反応時間への効果を検証した.高齢者においては筋力トレーニングにより敏捷性と全身反応時間の向上が期待できる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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