抄録
【はじめに】
埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会では埼玉県で開催された平成20年度全国高等学校総合体育大会、6競技種目においてコンディショニングルーム(以下CR)を設置し、選手に対しサポート活動を行った.このうちの1種目である体操競技での理学療法士(以下PT)によるコンディショニングサポート活動について報告する.
【方法】
平成20年8月4日から8月8日の5日間、体操競技会場にCRを設置し14名のPT(一日平均6.6名)により選手に対しサポート活動を行った.サポート記録と選手へのアンケート用紙の使用について承諾を得た上でその結果を集計し傷害の特徴や活動成果について検討した.
【結果】
利用者数はのべ96名(男子30名、女子66名、一日平均19.2名)であった.利用目的はケア87%、コンディショニング13%、主訴は疼痛55%、疲労22%、張り感12%、傷害部位は多岐にわたるものであったが主なものでは男子で肩・腰ともに20%、足13% 手・肘ともに10%、女子では腰29%、肩13%、足11%、下腿10%、膝8%、(既往のあったものは全体で19.4%)であり、症状の発現からの期間は1週間以内10%、1ヶ月以内27%、1ヶ月以上50%(このうち大会期間中の受傷は15.2% うち骨折や脱臼など重度の傷害は3例)、施行内容はストレッチ・マッサージ69%、アイシング9%、その他の手技3%、テーピング7%、リハビリ指導11%、施行後の満足度(大変満足を10点、不満足を0点とした10段階)の平均は8.5点、感想は動きが良くなった27%、身体が軽くなった26%、痛みが楽になった21%、安心感が得られた19%、欲しかった情報が得られた7%、PTの認知度は聞いたことがある38%、知らない10%、知っている52%、受傷時の対応は病院へ行く43%、治療院へ行く57%であった.
【考察】
今回CRを利用した選手の傷害の特徴として、ケア目的がほとんどであり傷害部位では男子は腰部・肩が多く、女子は腰部が多い結果となり競技力の維持のため傷害を抱えながら練習を継続する傾向にあることや男女の競技種目の違いが影響していると思われた.施行内容については練習・競技後が多くストレッチやマッサージが多かったが、既往をもつ選手もおりリハビリ指導も併用して行われていた.また急性期から亜急性期のものが半数を占めており、大会期間中の受傷で応急的な対応が必要な場面もあった.施行後の満足度としては高く、動きや痛みが楽になっただけでなく安心感や欲しかった情報が得られたというような感想もあり、PTによる大会サポートでの介入は有効であったと考えられた.しかし認知度については十分とはいえず、今後もこのような活動を通して競技特性を理解し、傷害管理や傷害予防につなげられるように継続していくことが必要であると思われた.