理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-413
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骨・関節系理学療法
半月板損傷、膝屈曲可動域制限に対する半膜様筋・膝窩筋へのアプローチについて
嘉陽 宗朋
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抄録

【はじめに】 今回、交通外傷にて約7週間膝屈曲可動域制限のある症例に理学所見をもとに半膜様筋と膝窩筋を中心にアプローチを行い良好な結果が得られたので、考察を加えここに報告する.以上、症例者に説明と同意を得た.
【症例紹介】 71歳、男性.6月5日バイク運転中、乗用車と接触し受傷.MRI所見にて外側半月板損傷、脛骨外顆面の軟骨損傷、内側側副靭帯損傷疑いがある.歩行にて膝痛増悪があり、階段昇降も2足1段でしか行えないため休職中.
【初期評価】 7月23日.膝関節可動域:伸展0°屈曲100°.受傷後、可動域制限が残ったまま生活していたことで膝周囲の筋伸張性は低下.膝屈曲時に膝前面伸張痛と膝窩外側にインピンジメント様の疼痛あり.大腿四頭筋の伸張性低下と外側半月板の後方移動が制限されていると考えられる.また約7週間の膝屈曲可動域制限にて内側半月板の後方移動も制限されていると考えられる.
【方法】 膝窩筋の収縮にて外側半月板の後方移動を誘導するために、背臥位にて軽度の下腿内旋と膝屈曲を行ってもらい、述者は下腿近位を持ち膝の前方引き出しと伸展の徒手抵抗を加え膝窩筋の筋収縮を促通し、屈曲運動を誘導した.また、内側半月板の後方移動を誘導するために半膜様筋に対しても同様の手技を行った.自主トレとして下肢ストレッチと膝周囲筋力強化を指導した.
【結果】 理学療法前、屈曲100°だった膝関節可動域が屈曲140°へ改善し、インピンジメント様の疼痛は消失した.また週に1回の外来通院を行い、1週間後には膝関節屈曲150°、3週間後には155°となり可動域制限を認めなくなった.さらに9週間後には歩行時の膝痛も軽減し階段昇降が1足1段で可能となり職場復帰され、14週間後には5分以上の正座が可能になった.
【考察】 初期評価にて膝の屈曲制限は、内・外側半月板の後方移動が阻害されていることが原因と考え、それに対してアプローチを行った.文献では半膜様筋腱膜での張力伝達が内側半月板後節~後角を後方へ誘導し、膝窩筋支帯での張力伝達が外側半月板後節~後角を後方へ誘導すると述べられている.また、可動域改善には、後方移動を誘発する要因が筋である以上、他動運動は出来る限り選択させるべきではないと述べられている.以上のことから、本症例でも筋収縮を伴いながら膝屈曲運動を誘導することで、内・外側半月板の後方移動が誘発され屈曲制限が改善されたと考えられる.また文献では関節軟骨の栄養には膝関節屈伸運動によるパンピング作用が貢献していると述べられている.膝関節可動域が改善したことや、自主トレーニングでストレッチと筋力強化を行ったことで、パンピング作用が効果的に働き、関節内の修復が進んだことで、階段昇降や正座が可能になったと考えられる.
【まとめ】 半月板の滑走障害による膝関節屈曲可動域制限には半膜様筋・膝窩筋の収縮を伴った膝屈曲運動が有効であることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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