理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-469
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骨・関節系理学療法
脊柱および骨盤帯の可動性が運動パターンやFRPに及ぼす影響について
山本 洋司野村 久志安部 章吾佐々木 晃一佐々木 大輔下野 俊哉
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キーワード: 表面筋電図, FRP, FFD
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抄録
【目的】表面筋電図による腰部筋リラクゼーションの評価としてFlexion Relaxation Phenomenon(以下FRP)が用いられている.腰痛を有しない健常者の場合,FRPが出現するという報告が多いが出現しないケースも認められる.その要因の1つとして体幹屈曲時の脊柱,骨盤の運動パターンや軟部組織の柔軟性が関与していると考えられる.そこで今回は腰痛がなくFRPが出現する健常者において,どのような運動パターンで体幹屈曲動作が行なわれているか,また運動パターンと柔軟性との関係について出現若干の知見を得たので報告する.

【方法】対象は,腰痛がなくFRPが出現した健常男性11名,平均年齢26.9±5.6歳,平均身長170.7±4.8歳,平均体重63.0±5.8kgであった.本研究は石州会六日市病院の倫理委員会の承認を得るとともに,全ての対象者に本研究の目的を説明し同意を得た.
方法は,高さ20cmの台上で立位姿勢をとり,安静立位,体幹最大屈曲,最大屈曲位保持を速度は規定せず普通の速度(4.38±1.0秒)で行なわせた.表面筋電図はNoraxon社製Myosystem1200とMyovideoを同期させ使用し,電極設置は両側脊柱起立筋(L4棘突起2横指外側)とした.またTh1とL5棘突起,上前腸骨棘(ASIS)と上後腸骨棘(PSIS)にマーカーを設置し,Myovideo上で脊柱屈曲角度,骨盤傾斜角度を計測した.また柔軟性の評価としてFFDを計測した.分析は体幹屈曲動作開始時から最大屈曲位までを10相に区分し,FRP出現相,各相ごとの脊柱屈曲角度と骨盤傾斜角度を算出した.またFFD0cm以下を柔軟性が低い群(-11.8±7.8cm),1cm以上を柔軟性が高い群(8.75±6.0cm)に分け検討した.

【結果】柔軟性が低い群の脊柱屈曲角度は3~4相でそれぞれ17.7±1.8°,16.8±2.4°と高い値を示し,骨盤傾斜角度は5~6相でそれぞれ16.3±4.0°,17.7±5.7と高い値を示した.柔軟性が高い群の脊柱屈曲角度は3~4相でそれぞれ19.8±8.4°,17.3±3.2°と高い値を示し,骨盤傾斜角度は5~6相でそれぞれ16.3±3.9°,18.1±3.7と高い値を示した.FFDとFRP出現相の関係については,FRPは柔軟性の高低にかかわらず右側脊柱起立筋では5~9相に出現し,左脊柱起立筋では6~10相に出現した.

【まとめ】FRPが出現した健常者における体幹屈曲時の運動パターンは,FFDにおける柔軟性の高低に関係なく運動初期から中期にかけて脊柱が優位に屈曲してゆき,中期以降に骨盤の前傾が強くなっていく傾向が示された.FRPの出現相もFFDとの関連性は低いと考えられる.運動パターンやFRP出現相が柔軟性の高低に左右されなかった要因として,FFDは脊柱と比較すると骨盤帯の影響が大きく,胸腰椎の可動性があまり反映してなかったためではないかと思われた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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