理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-381
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骨・関節系理学療法
下肢整形外科疾患患者における足把持筋力と運動機能の関連性(第二報)
福田 泉小林 量作小松 麻美中村 明人
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抄録
【目的】
我々は,第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会にて下肢整形外科疾患患者における足把持筋力と各運動機能の関連性について報告した.足把持筋力は立位姿勢の制御,高齢者の転倒リスク要因として注目されており,臨床においても自主トレーニングとして運動指導を行うことも少なくない.今回,症例数を増やし足把持筋力と各運動機能について検討した.
本研究の目的は,下肢整形外科疾患患者における足把持筋力と各運動機能の関連性を検討することである.


【方法】
対象者は当院で加療を受けている15名,平均年齢67±13(49~83歳),股関節疾患10名,膝関節疾患3名,下腿骨骨折2名であり,対象者全てからは書面による同意を得た.
運動機能項目は患側足趾柔軟性(足趾屈伸の垂直移動距離),患側等尺性膝伸展筋力,タオルギャザー時間,10m歩行,ファンクショナルリーチ(以下FR)とした.統計処理はMann-Whitney検定とPearson の相関係数を用い,有意水準を5%未満とした.


【結果】
1.測定結果の平均値は,足把持筋力対体重比0.07,足趾柔軟性伸展5.5cm,屈曲4.3cm,膝伸展トルク対体重比0.66Nm/kg,タオルギャザー時間25.7秒(n=10),10m自由歩行速度43.6m/s,自由歩幅0.5m,自由歩行率92.1歩/分,10m努力歩行速度63.6m/s,努力歩幅0.6m,努力歩行率112.1歩/分,FR31.5cm(n=12) である.特に,股関節疾患10例と膝関節疾患・下腿骨骨折5名,ではすべての項目において有意差はなかった.
2.足把持筋力対体重比との相関が認められたのは,膝伸展トルク対体重比(r=0.44),10m自由歩行速度(r=0.69),10m努力歩行速度(r=0.59)であった.他に,膝伸展トルク対体重比と10m自由歩行速度(r=0.55)・10m努力歩行速度(r=0.66)において相関を認めた.


【考察】
1.本研究の検査項目は患側での測定にも関わらず股関節疾患と膝・下腿骨疾患において有意差がないことから,障害関節による影響を受けにくいと言える.特に足部の検査項目については直接足部に傷害のない症例において測定・比較が可能と考える.
2.足把持筋力対体重比は歩行速度と相関関係にあった.膝伸展トルク対体重比も歩行速度との相関関係を認めた.これより,足把持筋力もこれまで多く報告されている膝伸展筋力と同様に歩行機能に影響している可能性がある.


【まとめ】
足把持筋力は下肢整形外科疾患において歩行速度と強い関連があり,障害関節に関わらず足部へもアプローチすることが大切である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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