理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-402
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骨・関節系理学療法
拘縮肩におけるX線画像の特徴
島 俊也金澤 浩岩本 久生出口 直樹亀井 聡美白川 泰山
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キーワード: 拘縮肩, ROM, X線画像
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抄録

【目的】拘縮肩を治療するにはROM制限に関与する主たる組織の判別が重要であるが,拘縮肩の病態は多岐にわたり,原因を特定することは容易ではない.ROM制限に関与する組織の検討は,屍体を用いた研究などで行われているが,拘縮肩を有する患者の生体内の状態を観察するためには画像所見が有用である.診療でよく行われる画像診断として単純X線があり,拘縮患者のほとんどが施行している.我々はX線画像上で肩甲上腕関節のアライメントを評価することで,肩関節周囲の軟部組織の状態を予測し,制限因子を特定する際に応用できると考える.今回は,拘縮肩のX線画像の特徴を明らかにすることを目的に,X線画像と肩関節ROMとの関係を調査したので報告する.

【方法】対象は肩関節周囲炎と診断され,理学療法を施行した17名(男性8名,女性9名)18肩関節であった.対象の年齢は(平均±SD)67.7±10.0歳,身長は155.1±9.8cm,体重は54.1±7.3kgだった.上肢帯に骨折の既往のある者,腱板損傷が疑われる者,著明な円背を呈する者は対象から除外した.対象には事前に研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た.測定項目は肩関節ROM,肩関節外旋位でのX線前後像におけるgleno humeral angle(GHA)およびacromial humeral interval(AHI)とした.肩関節ROMは屈曲,外転,第2肢位での内旋および外旋を他動的に測定した. GHAは肩甲骨の関節上結節と関節下結節を結んだ直線と上腕骨長軸が成す角度とし,AHIは肩峰と上腕骨頭の間の距離とした.なお,AHIについては個体差を考慮し,肩甲骨の関節上結節と関節下結節の間の距離を100として比率を算出し採用した.X線画像は診療放射線技師が撮影したものを使用した.GHA,AHIおよび各方向のROMの相関関係についてはSpearmanの順位相関係数を用いて検討し,危険率5%未満を有意とした.本研究は医療法人エム・エム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った.

【結果】GHAとAHIの相関係数は,r=-0.01(p=0.97)で相関関係を認めなかった.GHAとROMの相関係数は,屈曲がr=-0.38(p=0.17),外転がr=-0.51(p<0.05),内旋がr=-0.25(p=0.30),外旋がr=-0.56(p<0.05)であり,外転と外旋で有意な負の相関関係を認めた.AHIとROMの相関係数は,屈曲がr=0.35(p=0.15),外転がr=0.17(p=0.48),内旋がr=0.05(p=0.83),外旋がr=0.04(p=0.86)であり,相関関係は認めなかった.

【考察】外転および外旋の制限因子としては肩峰下滑液包の癒着や烏口上腕靱帯などの上方支持組織の伸張性の低下などが挙げられている (林ら,2004)(信原,2001).これらは肩関節のX線画像上での静的アライメントにも影響を及ぼすことが示唆され,外転および外旋方向のROM制限が強いほどGHAが大きいことがわかった.

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© 2009 日本理学療法士協会
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