理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-436
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骨・関節系理学療法
膝関節前十字靱帯損傷再建術後の内側広筋の酸素動態
板倉 尚子渡部 真由美
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抄録

【目的】膝前十字靱帯再建術後のリハビリテーションにおいて手術後2から3ヶ月は積極的なclosed kinetic chain(以下CKC)でのプログラムが施行されるが、その運動設定の際に持久性に配慮した明確な指標がない.今回、プログラム設定の指標づくりを目的に、膝前十字靱帯再建術後2ヶ月から3ヶ月の競技者の内側広筋の酸素動態を筋局所の筋酸素消費量を無侵襲で測定可能な近赤外分光法にて測定した.【対象および方法】対象は膝前十字靱帯再建術を施行した女子体育大学生4名(平均年齢19.3歳、平均身長160.8±7.2cm、平均体重60.1±2.4kg、以下ACL群と略す)とした.全例手術後2~3ヶ月で理学療法実施中の競技者である.測定前に大腿周径を膝蓋骨上5cmにて計測した.コントロール群は膝関節に外傷の既往がない女子体育大学生5名10肢(平均年齢20.8歳、平均身長165.6±2.3cm、平均体重60.4±1.3kg、以下C群)とした.測定には(株)アステム社製酸素飽和度計(Lb11)を用い組織酸素飽和度(以下、STO2)を測定した.測定筋は内側広筋(以下VMと略す)とし、筋腹中央部の皮脂厚を測定後、筋繊維に平行にセンサーを装着した.測定は1)仰臥位での180秒間安静保持、2)膝関節伸展位での等尺性収縮60秒間保持、3)仰臥位での休息180秒間とし、ACL群患側、ACL群健側、C群両側のVMのSTO2を測定した.【結果】大腿周径計測で健患差はACL群症例A-1.5cm、症例B-2.4cm、症例C-1.8cm、症例D-0.5cmであった.安静時STO2はACL群患側84.4±0.5%、ACL健側83.8±0.3%、C群80.0±0.3%であった.等尺性収縮時STO2はACL群患側78.2±6.5%、ACL健側75.8±5.0%、C群71.7±3.5%であった.STO2の経時的変化では収縮開始から最低値まで要した時間はACL群患側17.5±6.8sec、ACL健側33.3±15.9sec、C群41.8±13.6secであった.収縮終了から安静時STO2までの回復時間はACL群患側96.0±69.sec、ACL健側117.8±65.9sec、C群72.8±55.4secであった.経時的変化のパターンではC群は2肢を除き一定のパターンを示したが、ACL群患側では一定のパターンがみられなかった.【考察】本研究の仮説として等尺性収縮時ACL群のSTO2は低値を示すと予想したが仮説に反した結果が得られた.ACL群患側は筋萎縮が残存するため運動に動員される筋繊維が少なく、そのため酸素消費量も少ないのではないかと思われた.STO2の経時的変化では休息時にSTO2が回復レベルまでに要する時間はC群よりACL群が長く要していた.等尺性収縮により筋内圧が上昇しこれに伴う筋血流の阻害が筋活動時の酸素供給不足となるが、休息期には血流が回復しSTO2も回復するものと考えられる.C群では酸素供給不足が速やかに回復するが、ACL群では時間を要していた.ACL群に複数セットの運動を設定する際にはセット間に十分な休息を取り入れるのが望ましいと思われた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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