理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-446
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骨・関節系理学療法
足関節靭帯損傷における予後予測の検討
粕山 達也坂本 雅昭中澤 理恵川越 誠加藤 和夫
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抄録

【目的】足関節靭帯損傷はスポーツ傷害の中で最も多い傷害のひとつであり,その機能予後は靱帯損傷の程度(内出血,腫脹)によって左右される.しかし,年齢や性別などの個人因子及び足関節背屈制限や腓骨筋機能低下などの機能的因子も,競技復帰に影響を及ぼすと考えられる.本研究の目的は,足関節靭帯損傷者の経過記録を調査し,競技復帰に影響を及ぼす因子について検討することである.
【方法】対象は,2004年4月から2008年6月までに当院にて足関節靱帯損傷と診断され保存的治療を行った患者の中から,調査項目に欠損値を含まない148名とした.調査項目は基本属性2項目(性別,年代),臨床診断所見9項目(受傷機転,複合靭帯損傷の有無,陳旧性診断の有無,反復既往の有無,内出血の有無,ギプス固定の有無,跛行の有無,腫脹の有無,合併症の有無),理学療法開始時評価4項目(足関節背屈制限の有無,腓骨筋機能低下の有無,足指機能低下の有無,足部変形の有無)の計15項目とし,受傷日から競技復帰を果たした理学療法終了日までの治療日数を算出した.調査の実施にあたっては当院の倫理規則に準じて,個人情報を匿名化して行った.調査項目の中から治療日数に関連があると考えられる8項目(性別,年代,複合靭帯損傷の有無,陳旧性診断の有無,腫脹の有無,合併症の有無,足関節背屈制限の有無,足指機能低下の有無)を説明変数とし,治療日数を目的変数として数量化理論1類にて統計学的解析を行った.
【結果】8項目から足関節靭帯損傷の治療日数における予後予測式を検討した結果,重回帰係数0.65,決定係数0.42でありモデルの適合度は不十分であった.治療日数との関連を示す偏相関係数は,陳旧性診断0.53,複合靭帯損傷の有無0.22,合併症の有無0.21,足関節背屈制限の有無0.19,足指機能低下の有無0.15,腫脹の有無0.14,年代0.10,性別0.02の順に高かった.
【考察】今回の結果では,得られた予後予測式から足関節靭帯損傷の予後を全体の42%しか説明できない結果となった.しかし,陳旧性診断や合併症の有無が治療日数に影響を及ぼすことが示され,過去の報告同様に足関節靭帯損傷の治療においては適切な初期治療と合併症の予防が重要であると考えられた.また,足関節背屈制限や足指機能低下などの機能的要因も競技復帰を遅延させる一因であり,早期からの理学療法による機能低下の改善や傷害予防を行っていく必要があると考える.今後は今回含まれなかった変数を検討し,予後に影響を及ぼす因子を再考していくことが課題である.

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© 2009 日本理学療法士協会
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