理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-501
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内部障害系理学療法
糖尿病患者の血糖コントロールと家庭環境との関連性について
増井 正清
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抄録
【目的】糖尿病とライフスタイルとの関連性については様々な報告があるが、家庭環境との関連性について検討したものは少ない.そこで、調査を行い若干の知見を得たので報告する.

【対象】当院糖尿病友の会総会もしくは糖尿病教室参加者のうち、65歳以上の53名を対象とした.なお、運動が禁忌の者は除いた.

【方法】自記式質問紙法にて、年齢、性別、家族構成、家庭での役割、食事療法の変化ステージ(食事ステージ)および運動療法の変化ステージ(運動ステージ)、運動習慣等を調査し即日回収した.また、直近のHbA1cについて調査した.なお、統計処理はt検定を用い、有意水準は5%未満とした.

【結果】質問紙が回収できたのは、2型糖尿病患者52名(男性23名、女性29名).家族構成は、独居15名(以下、独居群.男性6名:72.7±5.1歳、女性9名73.9±6.8歳、)、同居37名(以下、同居群.男性17名:76.0±6.1歳、女性20名:73.1±7.4歳)であった.
食事ステージは、独居群で「準備期」「熟考期」の順に多かった.同居群は「行動期」「維持期」の順であった.運動ステージは、独居群で「準備期」「行動期」の順に多かった.同居群は「維持期」「行動期」の順であった.
HbA1cは、独居群7.5±0.8%(男性8.0±0.9%、女性7.1±0.7%)、同居群6.8±1.1%(男性6.6±0.9%、女性6.8±1.2%)であり、独居群が有意に高かった(p<0.05).また、独居群男性は独居群女性に比べ、HbA1cが有意に高かった(p<0.05).20分以上の運動を週に3回以上行っている者は、独居群5名(33.3%)、同居群21名(56.8%)であった.家庭での役割については、独居群は炊事、洗濯の順に多く、複数の役割がある者が14名(93.3%)、同居群は、掃除、買い物の順で、複数の役割がある者が21名(56. 8%)であった.

【考察】今回、血糖コントロールと家庭環境との関連性について調査したが、家族構成による影響が大きいように思われた.平成17年国勢調査によると、65歳以上の男性単独世帯は10.0%、女性は20.4%であるが、今回対象は平均年齢が74.1歳と高かったためか独居の割合は28.9%と高かった.独居高齢者数は男女とも一貫して増加を続けており、未婚率や離婚率の上昇によりさらに拍車がかかると予測される.独居となることにより、生活リズムや人間関係の変化は大きい.家族の協力を得られなくなるという生活変化により、セルフケア行動は大きな影響を受ける.
しかしSteptoeらは、介入1ヶ月後の運動の増加は「準備期」にあった人ほど有意に多く認められたと報告している.今回の調査結果で独居群は「準備期」該当者が多いことが判明したため、独居群への介入効果が示唆される.今後は病状だけでなく、家庭環境にも十分配慮した療養指導や心理的サポート等により、セルフケア行動の改善変化を促す必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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