抄録
【目的】当院における急性心筋梗塞症例の復職状況について調査し、復職に影響を及ぼす要因について検討したので報告する.
【方法】対象はH18年11からH20年8月の期間に当院においてAMI後の心リハを実施した症例中、入院前に何らかの職に就いていた29名(男性26名、女性3名、平均年齢54.1±6.1歳、入院期間16.1±5.2日)を対象とした.対象を調査時復職していた復職群24名、調査時復職していなかった非復職群5名に分類した(復職率82.8%).また復職群の職種を職務内容により、事務職(11名)・非事務職(13名:製造業2名、運送業2名、農業1名、塗装業2名、電気工事1名、自営業3名、ゴミ処理業1名、飲食店1名)の2群に分類した.診療録より一般事項(年齢・入院期間・ EF・PeakCK値)を調査し、復職関連項目(復帰時期・具体的な職種・仕事内容・遅延理由・復職にあたって難渋した点・非復職群にはその理由)について電話による聞き取り調査を実施した.検討事項としては一般事項について復職群・非復職群の比較を行った.また、復職群を対象に一般事項・復職関連項目について事務職・非事務職群を比較し、非復職群について症例ごとに復職できなかった要因について検討を行った.
【結果】年齢(復職群54±6.3歳、非復職群53.6±6.3歳)、入院期間(復職群16.7±5.5日、非復職群16.69±5.78日)、EF(復職群60.54±11.05%、非復職群59.7±15.85%)、peakCK(復職群3162.8±2157.6、非復職群4206.2±2762.5)であり、復職群、非復職群間に明らかな差は認められなかった.職種において入院期間・EF・peakCKいずれも事務職・非事務職群間に有意な差は認めなかった.職種と復職時期との間では、事務職(4.5±1.8週)非事務職群(8.5±3.8週)であり非事務職群において長い傾向であったが、全例発症4ヶ月以内には復職でできており、復職にあたって職場や職務内容を変更した症例はいなかった.非復職群の復職しなかった理由として、「固定した職業についていなかった(3名)」、「入院を期に定年退職となった(1名)」など心機能と関連のない要因で復職していなかった症例が主であり、1名のみ「再梗塞後による心機能低下のため復職できていない」との回答があった.
【考察】諸家らにより急性心筋梗塞患者の復職に関する報告は数多くみられている.Ronnevikらによれば1年以内に75%が復職していたとしている.本研究では、復職率82.8%であり全例4ヶ月以内と、先行研究と比べても復職率は高く、かつ早期であった.さらに転職・職務変更なども見受けられず、復職群では比較的スムーズに復職できていた.今回の調査では非復職群は心機能に限らず、復職意欲も含め心理的・社会的要因の影響も強いように思われた.今後は心理・社会的要因についてもさらに検討していきたい.